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給付金4630万円誤送金事件|田口翔容疑者、異常な金への執着

給付金4630万円誤送金/田口翔 トンデモ事件

「給付金4630万円誤送金事件」の概要

2022年4月8日、山口県の阿武町で「新型コロナ給付金」を誤ってひとりの男性に4630万円振り込むという大きなミスが発覚する。町はすぐに男性宅を訪れ、返金手続きをお願いした。
この男性は、24歳で無職の田口翔。当初は応じる素振りで銀行まで同行したが、到着後、態度が一変する。田口は「今日は手続きしない」と言って帰ってしまい、その後、「オンラインカジノで使い果たしたので返金できない」と言い出した。
5月12日、阿武町は田口を提訴。18日夜、山口県警は電子計算機使用詐欺容疑で田口を逮捕した。

事件データ

容疑者田口 翔(24歳)
発生日2022年4月8日
逮捕日2022年5月18日
発生場所山口県阿武郡阿武町
容疑電子計算機使用詐欺
(誤送金と知りながら使った)
キーワードオンラインカジノ、金への執着

「給付金4630万円誤送金事件」の経緯

給付金4630万円誤送金/田口翔

4月8日の午前9時50分、銀行から阿武町に ”誤送金” の連絡があった。阿武町は10万円の「新型コロナ給付金」を、ひとりの男性に誤って4630万円も振り込んでいたのだ。

誤給付された男性の名前は田口 翔(24歳)。町は田口に電話するも繋がらず、午前11時頃、田口の自宅を訪問した。寝起きの田口に“誤送金”を説明すると、驚いて支出伝票を二度見したという。

返金(組み戻し)手続きのため、銀行へ同行をお願いしたところ、「風呂に入るから1時間ほしい」と言うので、職員2人は待機。午後0時半頃、3人は車で阿武町から宇部市にある銀行に向かった。その途中、田口は「銀行へ行くならハンコが必要だ」と言うので、100円ショップに立ち寄り、認め印を購入した。

2時間ほどかけて、銀行に到着したのは午後2時半頃。手続きには間に合う時間だが、なぜか田口は直前になって「今日は手続きをしない。後日、公文書を郵送してほしい」と言い出す。そうこうしてるうちに銀行窓口は終了、町は仕方なくこの日の手続きをあきらめ、田口はひとりで帰って行った。

「金はすべて使った、罪は償う」

4630万円誤給付事件

翌4月9日は、田口と連絡は取れなかった。そして10日になって田口から「知人の弁護士と相談する」と連絡が入る。その後11日、12日は連絡が取れず、何度も自宅に訪問もしたが会うことはできなかった。

4月13日、阿武町は田口の母親に説得を依頼し、翌14日に母親が田口の職場まで出向いて説得するも応じず。その後、副町長らが同じく職場で本人と面会した。しかし田口は「僕は悪くない」「なぜ責めるのか」と役場側の非を指摘して、「弁護士と話す」の一点張りだった。

15日には阿武町側と田口側双方の弁護士同士が話し合い、「近日中に、母親立会いで田口本人が組み戻しの手続きを行う。日時が決まったら知らせる」と連絡があった。その後も、町は何回も自宅を訪問したが、応答はなかった。

21日夕方、自宅庭でタバコを吸っている田口と話すことができた。だが田口が言うには「お金は動かした。もう戻せない。犯罪になることはわかっている。罪は償う」とのこと。阿武町は金が不正に使われた可能性を考え、警察に相談した。

オンラインカジノで使い果たした?

4630万円誤給付事件/田口翔の出納記録
田口翔の出納記録

その後の調査で、誤送金を伝えた4月8日には約68万円引き出されていたことがわかった。その日から毎日のように金を動かし、4月19日までに一回最大で400万円など計34回の出金が確認された。そして口座にあった4630万円は、ほとんどなくなっていて6万8千円ほどしか残っていなかった。

阿武町は5月12日、給付金の全額と弁護士費用などを合わせた5100万円余りの支払いを求めて男性を提訴した。

5月16日には田口翔の弁護士が記者会見を行い、次のように説明している。

  • 4630万円は「使い切ってしまった」という理解で概ね合っている
  • 本人は現在、お金を所持していない
  • 現実的な問題として、返還が難しい状態

電子計算機使用詐欺容疑で逮捕

4630万円誤送金事件/田口翔容疑者

5月18日、「田口が謝罪と返金の意向を示している」という報道があった。「お金を使ってしまったことは、大変申し訳なく思う。少しずつでも返していきたい」とする田口本人のコメントも発表された。

しかし同日夜、山口県警捜査2課は「誤給付と知りながら使った」として、無職・田口翔(24歳)を電子計算機使用詐欺容疑逮捕した。
田口は容疑を認め、「金はオンラインカジノで使った」などと供述しているという。

警察はこれまでに押収したスマートフォンを解析するなどして、金の使いみちなどを捜査する方針である。

電子計算機使用詐欺罪とは?

人を欺いて財物をだまし取る罪は詐欺罪(刑法第246条)で法定刑は10年以下の懲役
一方、刑法第246条の2の電子計算機使用詐欺罪は、ATMや電子決済などで、電子計算機(コンピューターなど)に虚偽情報不正な指令を与えて不法な利益を得る罪。法定刑は詐欺罪と同じく10年以下の懲役

  • 銀行窓口で銀行職員をだまして現金を受け取れば詐欺罪
  • 自分の金ではないことを知りながら、自分の金としてATMから引き出せば電子計算機使用詐欺罪

4630万円は雑所得、税金は2000万円

元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「本当に手元に残った金がないならば、回収の見通しはほぼない。車や不動産など資産になるようなものを買っていたなら、回収の対象になるのだが…」と説明。主張がウソだった場合は「隠し資産などがないか金の流れを解明して、回収を模索することになる」とした。

気になる今後については「(4630万円は)雑所得となり得るので、確定申告をする必要が出てくる。納める税金は少なくとも2000万円ほどになるのではないか」とみている。

【最新情報】4630万円全額を法的確保!

田口翔/オンラインカジノ入金記録
6月20日

阿武町の代理人弁護士は6月20日、未回収だったデビット決済の約340万円を法的に確保したと明らかにした。既に4299万円は回収を終えており、これで誤給付金の全額を法的に確保した計算になる。
約340万円を確保した、詳しい経緯については明らかにしていない。

5月24日

阿武町の花田憲彦町長は5月24日、記者会見し、誤給付した4630万円のうち9割に当たる約4299万円を「法的に確保することができた」と明らかにした
前日(23日)、A社から3500万円返還されたのに続き、さらに799万円を確保できたことになる。実際は、決済代行業者3社がほぼ同時に返還していたという。(全額返還まで、あと331万円)

5月19日、阿武町が決済代行業者3社に対し、田口容疑者の”未納税金”の取り立てが可能なことが判明。町の弁護士が東京に出向いて3社に「取り立て調書」を置いてきたところ、「税金分をはるかに超える4299万円が返還された」とのことである。

国際カジノ研究所・木曽崇所長

4299万円が ”残っていた金” かどうかは、今の時点では不明。

国際カジノ研究所・木曽崇所長は「決済代行業者が警察の捜査の対象になることを恐れて ”補填” という形で返還した可能性もある」と推測している。

5月23日

田口容疑者が出金していた業者のうち、1社から3500万円余りが返還されていたことがわかった。返還されたのは20日。この業者には計27回出金していて、その全額にあたるとのこと。

5月21日

田口容疑者の弁護士によると、「4月14日時点では口座に2000万円あまり残っていたが、その後も出金を続けた」とのことである。

5月20日

5月20日午後2時前、県警は田口容疑者の自宅に家宅捜索に入った。捜索は午後4時頃に終了、捜査員が段ボールに入れた資料を運び出す様子が確認できた。
田口容疑者は「誤給付はわかっていた」という趣旨の供述をしているという。

誤送金の原因は「振込依頼書」

給付金を送金する担当者は、4月1日に住民の口座情報などを「フロッピーディスク」に入れて銀行に渡し、振り込みを行った。この時は、対象となった463世帯それぞれに10万円ずつが振り込まれた。

これで振込業務は無事に終了、ここまでは何の問題もなかった。これ以降、何もしなければ問題は発生しなかったのだ。しかしこのあと、本来は必要のない「振込依頼書」を銀行に提出したことが、今回の騒動の原因である。

振込依頼書」は役場の事務作業を進めるための資料で、「銀行コード」の小さい順番に名簿が作成されている。田口容疑者の口座は大手銀行のもので、銀行コードが一番小さい数字だった。そのため、リストの一番上に記載されていた。

データを作成すると、自動で「振込依頼書」が印刷されるシステムで、この時、記載されるのは振込の「合計額」と「名簿の1番上の人の名前」だけ。今回でいえばこの「振込依頼書」には、以下の2項目だけが印刷されていたことになる。

  • 合計額の「4630万円」
  • リストの一番上である「田口容疑者の名前」

本来なら必要ない「振込依頼書」を出納室の職員が誤った操作で作成して、なぜか銀行に出してしまった。そもそも、出す必要がない書類なので、上司もチェックをしていなかった。

誰のチェックを受けることなく、「振込依頼書」が銀行に提出されたことで、田口容疑者に4630万円が振り込まれてしまったのだ。

田口翔容疑者について

田口翔容疑者・少年時代
小学校時代の田口翔

田口翔容疑者(24歳)は2020年10月、山口県内から一人で阿武町に移住してきた。
阿武町では空き家を有効活用するため、移住者を積極的に受け入れている。田口はその制度を利用し、家賃2万5千円の空き家に住んでいた。これまで家賃の滞納はなかったという。

移住後は2020年末から、山口県萩市のホームセンターに正社員として勤務していた。しかし、4630万円の誤送金が発覚したあとの2022年4月下旬、「給付金でもめていて、店に迷惑がかかるので辞める」と伝えて退職。そのため、逮捕時は無職だった。

強い金への執着

田口翔/小学校の卒業文書

小学校の卒業文集には、「異常なまでの金への執着」が表れている。

  • もしも、地球最後の日が来たら という欄には「持ち金をつかいはたす」
  • もしも、タイムマシンがあったなら の欄には、「ロト6のばんごうをみらいにみにいく」
  • 将来の夢については「造へい局の、しょくいん」

と記すなど、とにかく金にまつわる記述ばかり。

中学時代の同級生は「田口くんのお金への執着は昔から」と明かす。
「ある同級生の祖父か祖母が亡くなって、遺産が現金で家に置いてあった。田口くんともう一人の不良仲間は中学の時、うまく言ってその同級生に金を持ってこさせたり、何万円もするエアガンを買わせたりしていました。持ち出した金は100万~200万円にはなる、とその同級生の母親が言っていました。使い道は買い物や外食などです」

別の同級生も「中学3年生から容姿も少し見た目も変わり始めて、学校の規則に反することをやったり、あまりよくない噂が耳に入るようになってきた」と話す。

また田口容疑者は、「万引きの常習犯」でもあり、釣り道具や漫画、自転車などを盗んでいたといったエピソードも聞こえてくる。この騒動以前は、ギャンブル漬けの日々だったという。

阿武町のコメント等

4630万円誤給付事件/阿武町・中野副町長

阿武町の対応が、なぜ弱腰で後手後手になったかについて、阿武町の中野副町長は以下のように話している。

「私たちは、とにかく申し訳ないという思いで、男性になかなか強く言えなかった。男性が最初から一切協力しないのであれば、差し押さえなり凍結できたが、本人を信じて『組み戻しの手続きに行ってください』とお願いしていた」

また、副町長は銀行の対応について、「銀行に金の流れの開示を求めたが、教えていただけない。(阿武町)指定の金融機関であれば、事情が分かっているので、すぐ手続きできたと思う」と語った。

阿武町の花田憲彦町長

5月19日、花田憲彦町長は「一連の事件が起きた発端が、私たちの町からの交付金の誤振込であったことは間違いのない事実。そのことについては当事者に申し訳ないことをしたという気持ちは当然のことしてある」と話した。

阿武町が処分を発表

阿武町は5月30日、花田憲彦町長を減給50%(3カ月)、副町長は減給40%(3カ月)とする処分方針を発表した。(町議会に関連議案を提案)
ほかにも、入金の担当窓口だった出納室長を減給10%(3カ月)の懲戒処分、課長級と課長補佐級の職員各1人を訓告、別の課長補佐級の職員2人も厳重注意するという。

花田憲彦町長減給50%(3カ月)
中野副町長減給40%(3カ月)
出納室長減給10%(3カ月)
課長級の職員1人訓告
課長補佐級の職員1人訓告
別の課長補佐級の職員2人厳重注意

この騒動に関する疑問 Q&A

Q. 田口翔容疑者の罪は?

田口翔容疑者の量刑予想

 

A. 「銀行の窓口でお金を引き出した場合は、窓口の職員を騙したことになって『詐欺罪』が適応され、懲役10年以下が科される。ATMで引き出した場合は『窃盗罪』で懲役10年以下または50万円以下の罰金。ATMやネットバンキングで送金した場合は、『電子計算機使用詐欺罪』で10年以下の懲役、さらにお金を返還せずに自分のものにした場合は、遺失物横領罪で1年以下の懲役になる」
(大阪地検元検事 亀井正貴弁護士)

Q. もしカジノで勝っていて、金が増えていたら?

A.「もし勝っていたら、それは本人のスキルによるもの。返金して残りは本人のものになる」
※ 返金したとしても罪は帳消しとはならない
(国際弁護士 清原博さん)

Q. 金は全額使ったと言っているが、そのことを証明できるのか?

給付金4630万円誤振込解説/国際カジノ研究所 木曽崇所長

 

A. 「使い切ったことを証明するには、収支リポートのようなものが必要。大手のカジノならあると思うが、発行しないオンラインカジノもある。本人が“使った”と言っているので、振り込み証明自体は出すと思うが、使い切ったかどうかは、本人が証明する気がないと難しい。“ギャンブルで使った”と言うと、その先の出所が分からないため、証明のしようがなくなる」
(国際カジノ研究所 木曽崇所長)

阿武町の対応に関する Q&A

Q. 阿武町の対応は甘いのでは?

A.「もう少し銀行の実務に精通した人を同席させるとか、指定金融機関にもっと頼み込んで大騒ぎをして、相手銀行に働きかけをしてもらうように依頼することもできたと思う」
(三井住友銀行元支店長 菅井敏之さん)

Q. 金融機関への仮差押えをしていれば状況は変わったか?

A.「男性が『きょうは手続きをしない』と言った段階で疑う必要があったと思う。仮差押えはケンカではないので、結論が出るまでホールドしておくということ。お金の流出は防げたと思う」
(大阪地検元検事 亀井正貴弁護士)

Q.「組み戻し」の手続きは、銀行に行かなくても、男性の自宅で書類に判を押すなどしてできないのか?

A.「間違って振り込まれた人が『組み戻しに応じる』と言った段階で、振り込んだ銀行と受け取った銀行が打ち合わせして『組み戻し』をするのは可能。ただ一般的には、振り込んだ銀行が受け取った銀行に『組み戻し依頼書』を渡して、振り込まれた人に確認を取るというやり方になる」
(三井住友銀行元支店長 菅井敏之さん)

Q.阿武町は誤送金が発覚した段階で、関係銀行に「誤送金が発生した」ことと、「本人に払い戻しを行わないように依頼」する公文書を速達で送っているが、効力はなかったのか?

A. 「公文書は、単純に告知するだけのもの。4月8日に物別れになった時点で“金融機関への仮差押え”などが必要だったと思う。この場合弁護士としては、翌日か翌々日には、仮差押えなど“お金の流出を防ぐ”対応をするべきだと思う」
(大阪地検元検事 亀井正貴弁護士)

給付金4630万円誤振込解説/三井住友銀行元支店長  菅井敏之さん

 

A.「振り込んだ人と振り込まれた人の当事者間の問題で、銀行は事務手続きをするだけで、その金額が間違っているかどうかまでは介入しない。しかし、支店にこういう公文書が来たのなら『こんな内容の公文書が送られて来たけれどどうしたら良いか?』ということを本部なりに相談して、お金の流れを止めるべきかどうか、判断することはできるかもしれない」
(三井住友銀行元支店長 菅井敏之さん)

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