【7選】新型コロナ持続化給付金詐欺|人生を棒に振る浅はかな犯行

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新型コロナ持続化給付金詐欺 トンデモ事件

コロナ給付金詐欺の実情

持続化給付金は、コロナ禍で収入が減った個人事業主らに支給するもので、法人なら最大200万円、個人事業者は最大100万円となっている。中小企業庁が2020年5月から2021年2月まで申請を受け付け、全国で約5.5兆円が支給された。迅速な支援のため添付書類を減らすなど手続きを簡素化していたが、懸念通り不正受給が多発する結果となった。

警察庁によると、全国の警察が摘発した持続化給付金の詐欺事件は2022年5月末時点で3315件(立件額約32億円)で、摘発された容疑者は3770人。年齢別に集計すると、20歳代が最多の62%(約2300人)で、10歳代(6%・約200人)と合わせて約7割に上った。年齢が高くなるほど少なくなる傾向である。

年代容疑者数
20代62%(約2300人)
30代14%(約500人)
40代8%(約300人)
10代6%(約200人)
50代5%(約180人)
60代以上5%(約180人)
コロナ給付金詐欺の年代別割合

コロナ給付金を含め、公金を詐取する事件は少なくないが、その理由として「知人などを騙すのではなく、後ろめたさがない」ことがあげられる。だが公金詐取には、申請書という絶対的な証拠が残り、調べればすぐバレるのだ。

ただ、現在のところ調査前であれば自主返還することで罪には問われず、加算金・延滞金の義務もない。(2022年6月15日時点・返還の義務はあり)

不正受給及び自主返還について|経済産業省

コロナ給付金コールセンター

【1】9.6億円騙し取った谷口光弘一家

コロナ持続化給付金9.6億円詐欺・谷口光弘
主犯の谷口光弘
主犯谷口光弘(逮捕時47歳)
共犯谷口梨恵(逮捕時45歳)元妻
谷口大祈(逮捕時22歳)長男
次男(逮捕時21歳)次男
被害額約9億6千万円
申請数約1800件
犯行グループ15グループ(40人以上)

谷口光弘は、自身が経営する東京都港区の会社でセミナーを開催して申請者を集め、手続きを代行。手数料として15~40万円を受け取っていた。不正受給は約1800件、9億6千万円におよび、同一グループとしては最大規模である。

セミナーでは違法であることは伏せ、「国の制度には抜け穴がある。名前と簡単な書類があれば、すぐに金が下りる」と説明していた。手続きには家族を手伝わせていたが、規模が大きくなり最終的には15グループ40人以上で犯行におよんでいたとされる。

持続化給付金9.6億円詐欺|同一グループでは最大規模の詐欺集団

警視庁は2022年5月30日、谷口光弘の元妻で三重県津市の会社役員・谷口梨恵(45)と、同県川越町の長男・谷口大祈(22)、犯行当時19歳だった次男(21)の3人を逮捕。インドネシアに逃亡していた谷口光弘も6月7日夜、不法滞在で逮捕となった。

 

【2】国税局職員らによる2億円詐欺

国税局職員らによるコロナ給付金2億円詐欺
主犯・松江大樹(左)、共犯・佐藤凜果(中央)、塚本晃平(右)
主犯松江大樹(逮捕時31歳)
元・東京国税局鶴見税務署職員
共犯塚本晃平(逮捕時24歳)
佐藤凜果(逮捕時22歳)会社員
東京国税局の元職員(男・逮捕時24歳)
大和証券元社員(男・逮捕時27歳)
大学生ら3人(21~26歳の男)
被害額約2億円
申請数約200件

松江大樹(逮捕時31歳)ら犯行グループは、「罪にならない」と言って持続化給付金の申請者を募り、LINE(ライン)で申請方法を教えていた。また、口コミでも申請者を増やしていた。

集めた申請者は高校生・大学生ら計約200人。彼らを個人事業主に仕立て、計約2億円を不正受給していた。名義貸しした学生らには「暗号資産に投資すれば個人事業主になるので給付金を申請できる。給付金はビットコインに投資して2倍にする。新たに申請者を紹介すればボーナスを渡す」などといい、手数料なども渡していなかったという。申請者らは1円も手に入れてないにもかかわらず、100万円の返金義務だけが残った。

警視庁は2022年6月2日、東京国税局・鶴見税務署員の塚本晃平(24)、会社員・佐藤凜果(22)ら男女7人を詐欺の疑いで逮捕した。不正受給額1人100万円のうち、20万円を詐欺グループ内で分配、残り80万円はビットコインに投資したとみられている。

投資に充てるとしていた1億6千万円は、主犯・松江大樹が握っている。彼は2021年2月にドバイに逃亡していたが、6月13日午後5時半頃、成田空港に到着し、逮捕された。

【3】立川署の巡査部長を逮捕

主犯立川署交通課・巡査部長(逮捕時59歳)書類送検
懲戒免職
共犯巡査部長の妻(60代)書類送検
不倫相手の自営業女性(50代)書類送検
不倫相手の知人男性(80代)書類送検
被害額100万円

警視庁・立川警察署巡査部長の男(逮捕時59歳)は2020年11月、(60代)に「コロナ禍で収入が激減した家政婦」と虚偽申請させ、給付金100万円を不正受給した。

妻は配送商品の仕分けをするパート従業員で、「ちょっとごまかせば持続化給付金を取れるのでは?」と犯行を持ちかけたのは元巡査部長の不倫相手の自営業女性(50代)。妻は扶養手当の対象なる103万円以下の収入に抑えていたが、収入が一気に増えたことで立川署に税額変更の通知が届き、発覚した。

元巡査部長は当初、「妻が勝手にやった」と説明していたが、やがて関与を認め全額を返還。騙し取った100万円は、「不倫相手との交際費に使うつもりだった」と供述していた。50万円を妻に、残り50万円から不倫相手に現金とプレゼントを渡したという。

警視庁は元巡査部長を2021年9月3日付で書類送検し、懲戒免職処分にした。59歳の元巡査部長はあと数カ月で定年となり、退職金2000万円超が支給されるはずだった。

当初、申請を拒否していた妻も、共謀者として書類送検。「警察官の夫が言うので大丈夫と思った」と供述している。ほかにも不倫相手と、その知人男性(80代)も書類送検されている。

【4】経済産業省のキャリア官僚から逮捕者が

コロナ給付金詐欺/経産省産業資金課係長の桜井真・産業組織課職員の新井雄太郎
犯人1桜井真(逮捕時28歳)
元・経産省産業資金課係長
犯人2新井雄太郎(逮捕時28歳)
元・経産省産業組織課職員
被害額家賃支援給付金1500万円
処分懲戒免職

2021年6月、コロナ禍で売り上げが減少した中小企業などを支援する家賃支援給付金を騙し取ったとして、警視庁は経産省産業資金課係長の桜井真(28)と、産業組織課職員の新井雄太郎(28)のキャリア官僚2人を逮捕した。

家賃支援給付金の管轄は経産省中小企業庁。2人は職場で堂々と詐欺を働いたということになる。

2人は持続化給付金の詐取も含め計3回、起訴されているが、起訴状によると「(事業実態のない)法人2社の収入が大幅に減った」と虚偽の申請をして、給付金計1500万円余を騙し取ったとされる。

桜井と新井は慶応高校時代の同級生。桜井は慶応大学からメガバンクに就職したが退職し、経産省に2018年入省した。新井は慶応大学から東京大学のロースクールに進学し司法試験に合格、2020年に同省に入省した。いずれも勤務態度に問題はなかった。

経産省は逮捕・起訴を受けて2021年7月、2人を懲戒免職にした。

【5】プロ野球名将 故・鶴岡一人の孫

コロナ給付金詐欺犯人/鶴岡嵩大
鶴岡嵩大
犯人鶴岡嵩大(たかひろ)(逮捕時23歳)
元慶応大生
被害額1100万円
判決懲役3年

2021年1月、島根県警松江署はプロ野球名将の孫をコロナ給付金詐欺で逮捕した。逮捕されたのは東京都港区の元慶応大生・鶴岡嵩大(たかひろ)(逮捕時23歳)で、プロ野球・南海ホークス(現ソフトバンク)監督を務めた故・鶴岡一人氏の孫にあたる。

鶴岡は2020年7月、共通の友人を通じて松江市内の男子大学生と知り合い不正受給を指南、不正受給の総額は1100万円に上る。鶴岡自身は虚偽申請していなかったが、給付金100万円のうち20万円を「コンサルタント料」の名目で受け取っていた。

鶴岡の父親は某スポーツメーカーの常務執行役員で、自宅は一等地の港区白金台、そして慶大野球部で活動するという恵まれた経歴。絵に描いたような「お坊ちゃま」のはずだが、不正受給の動機は「起業のため金が欲しかった」からだった。

裁判では2022年3月30日、松江地裁が懲役3年(求刑懲役5年)を言い渡した。判決理由で、鶴岡が「コンサルタント料」として詐取した金額の一部を受け取り、金目当てに犯行を主導したと指摘。また、祖父がプロ野球界で高名な存在だったことで劣等感を抱え、自力で成功しようと犯行に至ったとする経緯も「酌量の余地はない」と指弾した。

鶴岡嵩大の祖父でもある鶴岡一人氏

故・鶴岡一人氏は、一軍監督として通算1773勝を挙げた実績から、プロ野球史上最多勝監督としても知られる。また、勝率.609は歴代監督の中でも唯一の6割超えである。

選手のプロ意識を向上させるために発言した「グラウンドには銭が落ちている。 人が2倍練習してたら3倍やれ。 3倍してたら4倍やれ。 銭が欲しけりゃ練習せえ」という名言は有名である。

【6】甲府税務署員、国立印刷局員を逮捕

コロナ給付金詐欺/藤山雄太
元東京国税局甲府税務署員・藤山雄太
犯人藤山雄太(逮捕時26歳)
元・東京国税局甲府税務署員
処分懲戒免職

新型コロナウイルス対策の持続化給付金を国からだまし取ったとして、愛知県警は2020年12月2日、甲府市上石田2丁目在住の東京国税局甲府税務署員・藤山雄太(26)を詐欺容疑で逮捕した。

藤山は2020年5月、愛知県内の男子大学生(20代)と共謀し、虚偽の確定申告書の控えなどを使って大学生を「収入が減った個人事業主(美容業)」と偽って申請。大学生らの依頼で500通を超える確定申告書を偽造し、報酬として400万円以上を受け取っていたという。自身は虚偽の申請はしていなかったが、職務で得た知識を悪用していた。

逮捕・起訴を受けて東京国税局は2021年3月、藤山を懲戒免職にした。5月には名古屋地裁が有罪判決を言い渡している。

愛知県警は詐欺容疑で藤山容疑者の自宅を家宅捜索した際、乾燥大麻や吸引用具を見つけ、藤山容疑者ら3人を大麻取締法違反容疑で緊急逮捕した。

国立印刷局・大保勇也
犯人1大保勇也(逮捕時21歳)
国立印刷局・東京工場の元職員
犯人2椎葉崚(逮捕時20歳)
国立印刷局・東京工場の元職員
処分懲戒免職

藤山が逮捕された12月は、他にも国立印刷局の職員2人が逮捕、2人が書類送検されている。4人はいずれも20代で、起訴されたあと懲戒免職となった。

逮捕された2人は国立印刷局・東京工場の職員・大保勇也(21歳・埼玉県川口市芝下1)と椎葉崚(20歳・東京都北区滝野川2)。両名は虚偽申請で不正受給したほか、6~8月には椎葉ら職場の同僚や知人ら数十人に手口を指南し、報酬を受け取っていた。手口は、大保勇也がSNSで知り合った男から教わったとみられている。

【7】誤給付4630万円の返還を拒否

給付金4630万円詐欺/田口翔
4630万円の返還を拒否した田口翔
犯人田口翔(逮捕時24歳)
容疑電子計算機使用詐欺容疑
被害額誤給付4630万円のうち331万円が未返金

給付金4630万円誤送金事件|田口翔容疑者、異常な金への執着

コロナ給付金にまつわる事件では、自ら行った詐欺ではないものの、「誤給付された4630万円の返還を拒否」する事件も発生した。

2022年4月8日、「新型コロナ給付金」を誤ってひとりの男性に4630万円振り込むという大きなミスが発覚する。誤って送金してしまったのは山口県阿武町で、受け取ったのはこの町に住む無職の田口翔(24歳)。

この給付金は、住民税非課税の国民に対し一人あたり10万円が支給されるもの。阿武町は田口を含む463人に10万円を支給済みであったが、その後誤って463人分にあたる4630万円を田口ひとりに振り込んだのだ。

町はすぐに田口宅を訪れ、返金手続きをお願いした。田口は返金に応じる素振りで銀行まで同行するも、到着後、態度が一変。彼は「今日は手続きしない」と言って帰ってしまい、その後、「オンラインカジノで使い果たしたので返金できない」と言い出した。

町は幾度となく返金をお願いしたが、田口は母親の説得さえも聞かず、それを拒否。そのため5月12日、阿武町は田口を提訴する。そして18日夜、山口県警は電子計算機使用詐欺容疑で田口を逮捕した。

その後、5月23日にオンラインカジノの1社から3500万円が返還される。それに続き、翌24日には他の2社からも合わせて799万円が返還されたことがわかった。これで4299万円が阿武町に戻ってきたわけだが、残りはあと331万円。返還された理由についての詳しい事情は、今のところ不明である。

給付金4630万円誤送金事件|田口翔容疑者、異常な金への執着

 

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