堺市連続強盗殺人事件|交際女性に諭されてやっと自白したダメ親父

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堺市連続強盗殺人事件・西口宗宏 日本の凶悪事件

堺市連続強盗殺人事件

相続した1億5千万円相当をわずか3年足らずで浪費した西口宗宏は、自宅に保険をかけて放火した罪で懲役8年の実刑を受けた。約7年後に仮釈放となるが、交際女性には仕事しているふりをして「まとまった金が入る」と嘘をつく。そして服役中に計画した ”資産家をねらった強盗殺人” を決行してあっけなく逮捕となった。
裕福な家庭に育ち、努力せずに金を得ようとした報いは、”死刑” というかたちで返ってきた。
被害者の1人は、西口が子どものころ可愛がってもらった「象印マホービン元副社長」だったことも話題となった。

事件データ

犯人西口宗宏(当時50歳)
事件種別強盗殺人事件
発生日2011年11月5日、12月1日
犯行場所大阪府堺市
被害者数2人死亡
判決死刑:大阪拘置所に収監中
動機金銭
キーワード資産家

事件の経緯

西口宗宏は1999年頃、亡くなった母親から現金や不動産等合わせて約1億5千万円相当の遺産を相続したが、これを浪費してわずか3年ほどで使い果たした。

そのため2003年12月20日、まとまった金を手に入れようと保険金約3600万円目当てに自宅に放火。2004年4月20日に逮捕され、懲役8年の実刑判決を受けて服役した。

この件では、交際していた女性が身元引受人となり、職探しを条件に2011年7月に仮釈放となり、女性と同居を始めた。西口は9月下旬、女性に「仕事が見つかった、10月末までにまとまった金が入る」と告げている。

しかし、これは嘘だった。実際に探したのは「仕事」ではなく、殺して金を奪う「標的」だった。

67歳の歯科医妻を殺害

堺市連続強盗殺人事件被害者・田村武子さん

自分の嘘に追い詰められた西口は、「なんとか金を得なければ」と強盗を考え始め、10月頃から堺市内で襲う相手を物色し始める。

11月5日午後6時頃、堺市南区のショッピングセンター駐車場で、買い物帰りの歯科医師の妻・田村武子さん(67歳)を標的に決め、田村さんが高級外車に乗り込むところを襲った。西口は田村さんの顔や手足に粘着テープを巻き付けるなどして拉致。現金約31万円やキャッシュカードを奪った。

その後、河内長野市の山中に止めた車内で、食品用ラップを顔に巻き付けて殺害。翌6日午後2時50分頃、奪ったキャッシュカードを使い、銀行のATMで残高のほぼ全額にあたる現金5万円を引き出した。

同居していた交際女性には、約30万円を渡していたことが判明している。

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11月7日~9日には発覚を防ぐため、河内長野市の山中で遺体をドラム缶に入れて焼いた。田村さんの車は、堺市北区の銀行支店近くの商業施設駐車場で発見され、車内から田村さんの血痕が見つかった。また、堺市南区の山中で、田村さんのカバンや靴なども見つかった。

ショッピングセンターの防犯カメラには、買い物を済ませて駐車場に向かう田村さんの姿が確認されていた。

象印マホービン元副社長を殺害

堺市連続強盗殺人事件被害者・尾崎宗秀さん
象印マホービン副社長時代の尾崎宗秀さん

西口は、田村さん殺害で得られた金が少なかったことから、次の強盗殺人を決意する

12月1日午前8時10分頃、堺市北区に住む象印マホービン元副社長・尾崎宗秀さん(84歳)方に、宅配便を装って訪問。玄関先で応対した尾崎さんにいきなり背後から襲いかかり、顔に粘着テープを貼りつけ、両手足をビニール紐で縛った。

西口は、現金約80万円や商品券、クレジットカード3枚などを強奪。さらに顔に食品用ラップを巻き付けて殺害した。その後、尾崎さん宅の近所の農協ATMで、奪ったカードで現金を引き出そうとしたが、他の客が後ろに並んだため諦めた。

西口は70万円前後の現金を交際女性宅に残し、一時、所在不明になっていたという。女性には「迷惑をかける」「もう会えない」というメールを送っていた。

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家族ぐるみの付き合いがあった

堺市連続強盗殺人事件

西口は、2002年まで尾崎さん宅の向かいに住んでいた。かつては家族ぐるみの付き合いをしており、子ども時代から世話になっていたという。

西口の家は尾崎さん宅の真向かいにあり、小さいころから「ぼく、ぼく」と尾崎さんに可愛がられていた。尾崎さんが留守の時は、西口が犬の散歩をして駄賃をもらったりしていたという。

尾崎さんは資産家で、複数の不動産を所有。奪われた約80万円も、所有するマンションの管理人から家賃収入として前日に受け取ったもので、この日、取引銀行に預ける予定だった。

銀行員は、尾崎さんと連絡が付かないことから警備会社に連絡。午前10時20分頃、自治会長とともに家に入った警備員が、倒れている尾崎さんを発見した。

この時、尾崎さんにはまだ息があったが、午後4時前に死亡が確認された。死因は酸素欠乏だったという。

あっけなく逮捕

堺市連続強盗殺人事件
田村武子さんの捜索

仕事を探す代わりに ”2人も殺害” して金を奪った西口だったが、逮捕は意外とすぐだった。

同居の交際女性は、西口が不定期に多額の現金を所持しているのを不審に思い、知人に相談。知人が大阪府警に通報し、西口が捜査線に浮上するきっかけとなったという。
そして大阪府警南堺署の捜査本部は12月6日、田村さんのキャッシュカードで現金を引き出した容疑で西口を逮捕する。

田村さんの車はすでに発見済みだったが、事件当日、堺市南区の山中などを走っていたことが確認されていた。山中からは田村さんのショッピングセンターで買った物やカード類なども見つかった。

付近からは、西口のDNA型と一致する唾液が付いたペットボトルも発見されている。また、車から見つかった血痕は、田村さんのものと判明した。

さらに、尾崎さん宅から約1.5km離れた農協ATMの防犯カメラには、12月1日午前、尾崎さんのキャッシュカードで残高照会する男の姿が映っていた。この男は西口と背格好が似ており、西口がかつて尾崎さんと親しい間柄だったことなどから、捜査本部は2つの事件の関連を調べていた。

交際女性に諭されて自供

「事件とは無関係」と主張し、なかなか自供しなかった西口だが、弁護人を通じて同居女性から「正直に話しなさい」と伝言があり、12月14日、自白を始める。これを受けて、大阪府警が河内長野市の滝畑ダム周辺から骨片を発見した。

2012年1月5日、田村さんの死体遺棄・損壊容疑で再逮捕。
1月23日、強盗殺人や営利目的略取などの容疑で再逮捕。
2月22日、尾崎さんの強盗殺人容疑で再逮捕。

犯人・西口宗宏の生い立ち

堺市連続強盗殺人事件/西口宗宏

西口宗宏は、1961年8月26日、大阪府堺市の裕福な家庭で生まれた。

子ども時代から、殺害した象印マホービン元副社長・尾崎宗秀さん宅の向かいに母親と2人で暮らしていた。家族ぐるみの付き合いがあり、尾崎さんは西口をとてもよく可愛がっていたという。
中学時代は陸上部の選手で、クラスのリーダー的な存在だった。

地元の高校を卒業後、建設関係の会社で働き始め、30代で独立するも失敗。その後は無職で多額の借金を抱えていたが、娘に5万円以上するブランド服を着せるなど浪費癖があった。

1999年、死亡した母親の遺産として7000万円と不動産を相続してからは、生活は派手になる。ブティックを開業して一時は羽振りが良かったが、その後は経営が傾き借金が膨らんだ

巨額の遺産を浪費

遺産は3年足らずで浪費して使い果たしてしまった。このころ、尾崎さんの向かいからも引っ越す。

金に困った西口は2004年3月、自宅に3600万円の火災保険をかけて放火。現住建造物等放火罪で逮捕・起訴され、懲役8年の有罪判決を受けて服役した。

2011年8月に仮釈放。当時交際していた女性が身元引受人になって同居し、職を探すことが条件だった。しかし、その3ヶ月後に本事件を起こす。
西口は放火事件で服役中に、「金持ちを襲う」という大まかな犯罪計画を立てていたという。

裁判では最高裁まで争ったが、2019年2月12日、死刑が確定。現在は大阪拘置所に収監中である。

尾崎さん殺害の前日、会員交流サイト「mixi」の西口が卒業した中学の同窓生が使っていたサイトには「今日も根性出んかった。明日は絶対!確実に!!」と自分を鼓舞するような記述があった。更新はこれ以降、途絶えている。

自己紹介欄には「俺は 生きてる価値のない男です!!それでも 夢 希望 を持って今日を生きてしまっています」と記し、好きな言葉として「家族・友達」などと書いていた。

西口宗宏死刑囚が獄中で描いた絵

西口宗宏死刑囚の「恐怖」

「第16回死刑囚表現展」(2021年10月23~25日)に出展された西口宗宏死刑囚が描いた絵。
タイトルは「恐怖」。2019年2月に最高裁で死刑が確定した後の作品である。死刑執行を告げられる瞬間を描いたものと思われる。

「死ぬんなんか恐(こわ)ない!! 死ぬんを想像するんが恐いんや!!! せやから今は〝恐怖の日々〟」と記されている。 

裁判員裁判

2014年2月12日、大阪地裁での初公判で、西口宗宏被告は起訴事実を認めた。

検察側は冒頭陳述で、西口被告が放火の罪で服役中、「資産家を狙った強盗殺人計画」を立てたことを明らかにした。
動機については「仮出所後、保護観察官に無職であることを隠し、交際女性にも『金が入る』と嘘をついていた。嘘がばれると刑務所に戻るはめになると考えた」と述べた。
犯行については「被害者の顔に何回もラップを巻き付けた」と悪質性を指摘した。

弁護側は「絞首刑は憲法に違反する残虐な刑罰にあたる」として、死刑回避を求めた。

26日の公判で遺族3人が意見陳述し、「極刑を受け入れるのが最低限の償いだ」などと述べ、死刑を求めた。

同日の論告で検察側は、「仕事をして、まとまった金が入る」という交際女性についた嘘を隠すため、何の落ち度もない2人を殺害した犯行について、「あまりに非道で、鬼畜の所業と言わざるを得ない」などと指弾した。そして「自らの手を汚さないよう、ラップで顔を巻く殺害方法は極めて残虐」と悪質さを強調した。

放火事件の仮出所中だったことから「服役中に今回の犯行を考えており、法律を守る意識がない。極刑を望む遺族の思いを最大限考慮すべき」と述べた。

西口被告は最終意見陳述で「尊い命を奪い本当に申し訳ありません。極刑が当然の報いです」と述べた。

第一審判決は死刑

2014年3月10日、判決で大阪地裁は、西口被告に死刑を言い渡した

裁判長は、”食品用ラップを顔に巻いて窒息させる手口” について「被害者の恐怖や絶望は、想像を絶する。死者への畏敬の念はみじんもなく、非人間的だ」と厳しく批判。さらに、西口被告が放火事件で服役中に強盗殺人の計画を練っていた点に触れ、「社会に復帰後、半年もたたないうちに計画を実行した。法律を守る意識が極めて希薄だ」と述べた。

そして、「善良な市民が、突然狙われて犠牲になった。遺族らの深い悲しみや喪失感は筆舌に尽くしがたい」などと指摘。西口被告に反省の態度が見られるなどの事情を考えても、死刑を選択せざるを得ないと結論付けた。

弁護側は即日控訴した。

最高裁で死刑が確定

2016年6月17日の最終弁論で弁護側は、「犯行の計画は具体的なものではなかった」と強調。「被告は脳に障害があり、犯行時は心神耗弱状態だった可能性がある」として、無期懲役への減刑を主張した。
検察側は控訴棄却を求めた。

2016年9月14日、大阪高裁は判決で一審の死刑判決を支持した。

裁判長は「緻密さに欠けるが、骨格部分の計画性は高く、犯行意思は強固だった。資産家を狙い、当初から殺害や遺体の処分まで予定しており、一審の評価は揺るがない」と述べた。

当時の精神状況については「事件に影響する脳機能障害はなかった」と指摘し、完全責任能力を認定した。
被告側は即日上告した。

最高裁判決も死刑

2019年1月22日の上告審弁論で、弁護側は「完全責任能力があったかどうか、立証されていない。犯行時間帯は人通りが多く、計画性は低い。反省も深めている」として、無期懲役への減刑を主張。

検察側は「1か月で2人を殺害し、人命軽視の姿勢は顕著。犯行道具も準備しており、計画性の高い犯行」と述べ、上告棄却を求めた。

2019年2月12日、判決で裁判長は、「犯行は、強固な殺意に基づく計画的なもので、殺害方法も冷酷というほかない。被害者に全く落ち度はなく、遺族らは厳しい処罰感情を抱いている。動機も身勝手で酌量の余地はない」と指摘して上告を棄却。西口被告の死刑が確定した。

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