フィリピン人2女性殺人事件|民事訴訟しまくりの死刑囚

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日本の凶悪事件

事件データ

主犯沢本信之(当時45)
死刑:名古屋拘置所に収監中
犯人1福元義明
無期懲役
犯人2松山栄(51歳没)公訴棄却
2000年10月8日 病死
犯行種別強盗殺人事件
殺害日1998年12月25日
犯行場所三重県松阪市
被害者数2人死亡
動機金銭目的
キーワードフィリピン女性殺害

フィリピン人2女性殺人事件

借金の返済に困った土木作業員の沢本信之(当時45)は、土木作業員の松山栄、無職の福元義明と共謀して、沢本と顔見知りのフィリピン人女性2人をターゲットとする強盗殺人を計画した。

フィリピン人女性2人はスナックの従業員で、ひとりが当時24歳、もうひとりが28歳だった。犯行グループ3人は、彼女らが不法滞在であることに目を付け、「銀行口座を持てないから、自宅に現金を保管しているはず」と考えたのだった。

1998年12月25日午後3時30分頃、犯行グループは女性2人が住む三重県松坂市のアパートに「偽装結婚の相手を紹介する」と騙して上がり込んだ。そして、2人とも首をネクタイで閉めて殺害。現金1万3千円とネックレスなど4点、計25万円相当を奪い、証拠隠滅のためテーブルなどに付いた指紋を拭き取って逃走した。

沢本は、スナックでこのフィリピン女性らと知り合いになった際、不法滞在であることを知ったという。また逮捕後の取調べで、同年5月に発生した名古屋市内のパチンコ店で従業員に暴行して現金約1900万円を強盗した事件は、澤本と松山の犯行であったことが判明した。

逮捕後の取り調べで、沢本と松山は1998年5末、名古屋市内のパチンコ店で従業員を殴って頭に6ヶ月の怪我をさせたうえ、現金約1920万円を強盗したことが判明している。

沢本に死刑確定

沢本信之被告は、初公判で傍聴していた遺族に土下座して謝罪した。

2000年3月1日の第一審判決公判で、津地裁は3被告に死刑を言い渡した

裁判長は「背後からネクタイを巻き付けて強く絞め、さらに発見を遅らせるために遺体を隠し、テーブルの指紋を拭き取るなど、犯行は残虐で悪質」と指摘。「借金返済のため2人を同時に殺害し、所持金を奪おうとした動機は著しく悪質」、さらに事件はフィリピンで発生当初から新聞、テレビで盛んに報じ続けられたことから、「被害者の母国に与えた影響も大きく、遺族も極刑を求めている」と量刑理由を述べた。

また強盗致傷事件についても言及し、「反省しているなど有利な点を考慮しても、死刑はやむを得ない」と断じた。福元被告についても「(沢本、松山被告に比べ)刑事責任は少し軽いとはいえ、罪責は誠に重大」とし、「3人が平等で一心同体の立場だった」とする検察側主張を認めた。

3被告とも控訴したが、松山被告は2000年10月8日、収監先の名古屋刑務所で病死したため、公訴棄却となった。

沢本被告は一審判決後の2000年11月21日、

  • 被害者に対して自分が生きていることが申し訳なく思ったこと
  • 共犯者の供述が嘘であるにもかかわらず、一審判決で採用されたことに対する抗議

を理由に、職員から貸与された殺虫剤を飲用するという自殺未遂事件を起こしている。

2001年5月14日、名古屋高裁で開かれた控訴審判決で、福元被告について一審判決を破棄して無期懲役、沢本被告は一審の死刑判決が支持された。

裁判長は判決理由で「計画性の高い非情かつ残忍な犯行。動機は自己中心的で酌量の余地はなく、刑事責任は重大」と述べた。福元被告が減刑された点については、「沢本被告は事件の発端を作り、主導的・中心的役割、福元被告は殺人の実行犯だが、従属的な立場だった。遺族に謝罪金を払い、更生の可能性はある」と述べた。福元被告は上告せず、無期懲役が確定した。

最高裁で被告側は弁論で「沢本被告を事件の発案者とした一、二審は事実誤認だ。共犯者と役割の差はない」と主張。一方、検察側は「被告が主導的役割を果たしており、犯行は冷酷、結果も重大だ」と述べ、上告棄却を求めた。

2004年12月14日の最高裁判決で、沢本被告の上告が棄却され、死刑が確定した。判決理由で裁判長は、強盗殺人について「強固な殺意に基づき、無防備な被害者らを欺いて殺害した卑劣で残忍な犯行」と指摘。「計画の段階から実行まで、中核的な役割を果たしており、無期懲役となった福元被告との刑の均衡を考慮しても死刑はやむを得ない」と述べた。

沢本死刑囚が起こした民事訴訟

沢本信之は改姓して現在は「森本」姓であるが、本記事では混乱を避けるため、「沢本」姓で統一

沢本信之は、一審判決後の2000年4月17日に名古屋拘置所に収容されて以降、判明しているだけで24件以上の民事訴訟を提起している。

以下はその一部である。

共犯の福元に損害賠償

沢本死刑囚は「福元受刑者の虚偽供述に裁判所がだまされて、役割の主導と従属が逆になり、死刑判決を受けた」と主張。「判決で生命の侵害を受け、多大な精神的苦痛を強いられた」として、共謀した福元受刑者を相手に3千万円の損害賠償を求め名古屋地裁に提訴した。

2005年1月26日に第1回口頭弁論が開かれたが、その後、棄却された

差し入れ文書の一部抹消

死刑確定後の2004年8月、名古屋拘置所に収監された沢本死刑囚に、郵送で「死刑方法などが記されたパンフレット」が届いた。名古屋拘置所は「そのまま閲覧させると心情不安定になり、規律維持に支障が出る可能性が高い」として一部を抹消して沢本に渡した。

沢本死刑囚は、「差し入れ文書の一部を名古屋拘置所長に抹消されたのは違法」として、国を相手取り10万円の損害賠償を求めた。

2006年12月6日、名古屋地裁は「抹消処分は合理的とは言えず、所長は裁量権を逸脱した」として、国に1万円の支払いを命じた。裁判長は「原告が抹消部分を閲覧しても、拘置所の規律が放置できない程度の障害が生ずるとは認められない」と判断した。

通信不許可に関する提訴

2006年7月上旬、民事訴訟他4件において裁判所から通知を受けた沢本死刑囚は、取り下げ書や準備書面を郵送するため、名古屋拘置所長に切手の恵与を求めたが不許可とされた。この件について、精神的苦痛を受けたことと規則および憲法違反であるとして41万円の損害賠償を求めた。

2007年7月27日、名古屋地裁は一部について訴えを認め、国に2万円を支払う命令を出した。

食中毒騒動で提訴

2006年10月、名古屋拘置所で大規模な食中毒があった。収容者801人中、沢本死刑囚を含む92人が下痢や吐き気などの症状を訴えたが、原因は拘置所の給食で、検査を受けた77人のうち7人から食中毒原因菌が検出されたが、沢本死刑囚からは検出されなかった。

沢本死刑囚は「食中毒が原因で下痢や腹痛を起こしたのは、拘置所側の注意義務違反」として国に慰謝料10万円の支払いを求めた。2009年10月23日、名古屋地裁は拘置所側の安全配慮義務違反を認め、5千円の支払いを命じた

裁判官は「給食は品質に問題があれば生命身体に深刻な損害を与える恐れがあり、相当高度の安全配慮義務が求められる」と指摘。一部で原因菌が検出されていることから「拘置所長らは調理場・食材・炊事係の衛生管理のいずれかで高度な安全配慮義務を怠った過失があった」と認定した。

「ヤマザキ春のパン祭り」不許可で提訴

(参考画像)

沢本死刑囚は2015年3から4月にかけて、「春のパン祭り応募券」19点分と飴の袋についている「懸賞応募券」6枚を親族に郵送しようとしたが、拘置所が不許可としていた。また、知人が差し入れようとしたネガフィルムについて、拘置所は「書籍などに該当しない」として認めず返送した。

これらの拘置所の対応について、沢本死刑囚は「精神的苦痛を受けた」として、国に賠償を求めていた。2017年4月13日、名古屋高裁は「拘置所の不許可は違法」と認定。沢本死刑囚の訴えを退けた一審判決を取り消し、国に2万2500円の支払いを命じた。

裁判長は「応募期間が過ぎて応募券の意味がなくなり、精神的苦痛が生じたのは明らか」として、応募券1枚(パンは1点)あたりの慰謝料は500円、ネガフィルムについての慰謝料は1万円とした。拘置所は、過去に沢本死刑囚が応募券を知人に郵送したり、プリントする写真を選ぶためにネガフィルムの差し入れを受けたりすることを認めてきた経緯があった。

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