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医師ら生き埋め殺人事件|金のためだけに2人を生き埋めにした凶悪犯罪

高橋義博 日本の凶悪事件

医師ら生き埋め殺人事件

1992年7月23日、高橋義博と共犯者3人は、まったく落ち度のない医師ら2人を拉致・監禁、金銭などを奪ったうえで、生き埋めにして殺害した。
高橋の不動産会社は、バブル崩壊ととも経営が傾き、金に困っての犯行だった。そして、被害に合った医師は、不動産売買で大金を得たというだけで標的にされていた。
4年後、別件で逮捕された共犯者が罪を自供したことで、事件が発覚。4人は逮捕され、首謀者の高橋には、死刑が宣告された。

事件データ

首謀者高橋義博(当時42歳)判決:死刑
2021年2月3日獄中死(享年71歳)
共犯1酒井高通(当時42歳)判決:無期懲役
共犯2葛西勝(当時36歳)判決:無期懲役
共犯3多田暁仁(当時31歳)判決:無期懲役
犯行種別強盗殺人事件
犯行日1992年7月23日~24日
犯行場所殺害場所:栃木県藤原町
監禁場所:東京都世田谷区
被害者数死亡2人
動機金銭目的
キーワード生き埋め、上申書殺人事件

事件の経緯

高橋義博(当時42歳)は、東京都目黒区で不動産会社を経営していた。しかし、バブル崩壊により経営が傾き、資金繰りが悪化してしまう。そのため、親しい暴力団組長から約2億円を貸りたが、毎月の返済に困窮するようになっていった。

そこで、取引関係で知り合った広尾病院の医師・小尾和洋さん(37歳)が、不動産売買で12億円の収益を得たことに目を付けて、これを強奪しようと犯行の計画を立てる。

計画は、まず小尾さんの資産管理をしている美容室経営・深沢由秀さん(32歳)を拉致して資産状況を把握。その後、小尾さんを誘い出して資産を強奪した後、殺害するというものだった。

高橋は、部下で役員の酒井高通(当時42歳)に計画を話し、社員の葛西勝(当時36歳)、土木作業員の多田暁仁(当時31歳)も加わって、犯行は4人で共謀することになった。

2人は生き埋めに・・・

1992年7月23日深夜、高橋らは深沢さんを自宅駐車場から拉致、世田谷のマンションに監禁した。そして、深沢さんに小尾さんを電話で誘い出すよう脅迫した。

翌24日、同マンションにやってきた小尾さんを高橋らは監禁し、拳銃で脅して銀行口座から現金約79万円とキャッシュカード3枚を奪った。さらに、銀行口座から約200万円を強奪した。

その後、2人に睡眠薬を飲ませてから車に乗せて、栃木県藤原町の国有林へ向かった。人通りもない山中に着くと、「往生せいや」などと脅迫して全裸にさせた。そして、あらかじめ掘っておいた穴の中に追い込んで横たわらせ、生埋めにして窒息死させた

事件後、高橋は東京で新しく貿易会社を経営、酒井が役員に収まった。葛西は東京で不動産業手伝い、多田は広島県で土木作業員として働いていた。

1996年5月29日、神奈川県警は、法定限度を超える高金利で金を貸し付けていたとして、葛西を出資法違反容疑で逮捕する。この取り調べの最中、葛西は「小尾さんら2人を、栃木県内の山林内に埋めた」と供述する。

これを受け、神奈川県警が捜索したところ、6月13日に小尾さんと深沢さんの白骨化した遺体を発見。6月14日、4人を強盗殺人他容疑で逮捕した。殺害から4年後のことだった。

首謀者・高橋義博について

医師ら生き埋め殺人事件・高橋義博

広島県出身の高橋義博は、バブル時代に不動産業などで成功を収めており、東京で会社をいくつか経営していた。

当時は羽振りも良く、プロ野球・巨人軍の選手数人と親しく交際したり、ボクシングの元東洋太平洋チャンピオンの後援活動などもしていた。また、ハリウッドでも活躍する俳優と家族ぐるみで付き合うなど、芸能人やスポーツ選手のタニマチのような活動もしていたという。

しかし、バブルの崩壊とともに会社の経営は行き詰まり、負債は億単位となる。やがて暴力団から借金するようになり、その取り立てに追われるようになった。
そんな時、不動産売買で12億円の利益を上げた医師に目を付け、強盗殺人の計画を立てる。以前、この医師の土地の売買時に、高橋がその仲介をしていたのだ。

計画は安易で無謀だった。数億円奪うつもりで部下3人とともに犯行を実行するも、手に入れたのは数百万円。そして、帰すに帰せなくなった被害者2人を、生き埋めにして殺害したのだった。

犯行は4年後に発覚し、4人は逮捕。首謀者の高橋には、2005年9月20日、死刑が確定した。
その後の2021年2月3日、高橋は拘置所内で病死している。(享年71歳)

高橋は「上申書殺人事件」の立役者

上申書殺人事件・後藤良次
水戸市男性殺害事件・宇都宮男女4人死傷事件・上申書殺人事件の後藤良次

死刑確定囚となった高橋は、東京拘置所に収監されるが、2005年、ここでにある人物と知り合う。

それは、水戸市男性殺害事件・宇都宮男女4人死傷事件で死刑判決を受け、当時上告中だった後藤良次だった。彼は、別の複数の殺人事件に関わっていて、それを告発したいと考えていた。後藤は、その事件の首謀者・三上静男裏切られたと考えており、今も塀の外でのうのうと暮らしているその男に、法の裁きを受けさせようとしているのだった。

本当だったら大変なことだと考えた高橋は、知り合いの新潮社の記者にそれを伝えた。そして、できるなら「告発」の手助けをしてあげてくれないかと頼んだ。

結論からいうと、この告発は”本物”で、この告発のおかげで警察も知らなかった「上申書殺人事件」は明るみになった。しかし、この時点で証拠のほとんどは隠滅されており、立件できたのは1件のみ。

2010年3月、首謀者・三上静男は、死刑とはならなかったが、無期懲役刑が確定した。

獄中死した高橋義博死刑囚

そんな事件解決の立役者となった高橋だったが、2021年2月1日に胸の痛みを訴え、外部の医療機関で急性冠症候群と診断される。しかし本人がカテーテルの挿入を拒んだため、拘置所の病棟で内服薬で治療していたが、2月3日午後0時12分に死亡が確認された。享年71歳だった。

裁判

第一審:横浜地裁

1996年9月30日、横浜地裁で初公判が開かれた。

  • 高橋義博被告は、2人を監禁したことは認めたが「殺人は中止されたと思っていた」と述べ、強盗殺人への関わりを否認した。
  • 酒井被告は、強盗殺人の共謀について認否を留保。2人を穴に埋めたことは認めたが、小尾さんの首を絞めていないとした。
  • 葛西被告は、監禁と殺人については認めたが、金銭を奪うつもりはなかったとした。
  • 多田被告は、監禁と殺人は認めたが、強盗について認否を留保した。

1999年11月11日の公判で、葛西被告は「死をもって遺族に償いたい」と死刑判決を望み、臓器提供意思表示カード(ドナーカード)のコピーを同地裁に提出。「臓器を提供して罪を償いたい」と述べた。

2000年3月23日の論告求刑で、検察側は「命ごいをする被害者を、生き埋めにするなど残忍かつ冷酷」と指摘した。

2000年8月29日の判決公判
裁判長は、高橋被告について「公判で供述が変遷しており信用できない。実行行為に手を貸さず、犯行を主導して不可欠な役割を果たした。借金苦を免れるために、何ものにも代えがたい2人の命を奪った結果は重大」と断じた。

酒井被告については、公判で反省したことや、「殺害を思いとどまるように進言することもあり、人間性も見られた」と述べ、高橋被告の絶対的な地位とは一線を画すため、死刑を言い渡すには躊躇するとした。
葛西被告、多田被告については、死刑選択も考えられるが、関与は従属的であるとした。

被告人求刑判決控訴
高橋義博死刑死刑
酒井高通死刑無期懲役
葛西勝無期懲役無期懲役×
多田暁仁無期懲役無期懲役

葛西勝のみ、控訴しなかったため無期懲役が確定した。

控訴審:東京高裁

2002年2月19日、控訴審初公判が開かれた。
高橋被告は「事前に殺害の指示はしなかった」として、死刑は重すぎると主張。酒井被告と多田被告も減刑を求めた。

これに対し検察側は、高橋被告と計画を立てた酒井被告について、無期懲役では軽いとして、求刑通り死刑を求めた。

2003年4月15日の判決公判
裁判長は、「口封じのため、あらかじめ殺害を計画していたのは明らか」と高橋被告の主張を退けた。「高橋被告は犯行計画を立案し、共犯者を意のままに動かした首謀者。泣きながら命ごいをする被害者を生き埋めにした残虐極まりない犯行で、極刑はやむを得ない」と述べた。

酒井被告と多田被告については、関与は従属的とした。

被告人一審判決控訴結果上告
高橋義博死刑棄却
酒井高通無期懲役棄却×
多田暁仁無期懲役棄却

酒井高通は上告しなかったので、無期懲役が確定した。

上告審:最高裁

2006年9月14日の最高裁弁論。
弁護側は、「殺害方法も実行犯が決めた。高橋被告は殺害の実行行為に加わっておらず、無期懲役が確定した共犯者に比べると刑が重すぎる」と死刑回避を求めた。
検察側は「殺害を持ち掛けたのは高橋被告で、事件の首謀者」と被告側の上告棄却を求めた。

最高裁は、殺害後約4年たって犯行が明らかになったことを指摘。「帰りを待ち続けた家族が受けた衝撃は、察するに余りある」と述べた。 「金銭的利欲に基づく犯行で、動機に酌量の余地はない。何ら落ち度のない被害者2人を、冷酷非情な手段で殺害した犯行は悪質。実行行為には直接関与していないが、共犯者に実行させた首謀者にほかならず、その刑事責任は最も重い」と判決理由を述べた。

2005年9月20日、多田暁仁の上告は棄却され、無期懲役が確定、2006年10月26日、高橋義博の上告が棄却され、死刑が確定した。

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