ヤマト運輸・男女殺傷事件|報道陣にVサインしたイカれ男

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筧真一/ヤマト運輸・男女殺傷事件 日本の凶悪事件

「ヤマト運輸・男女殺傷事件」の概要

2020年10月6日早朝、日本を代表する運輸会社・ヤマト運輸の集配施設で、恐ろしい殺人事件が発生した。事件があったのは神戸市北区の集配センター内で、前日に強制解雇されていた筧真一(当時46歳)が、いきなりパート女性と男性従業員に刃物で襲い掛かったのだ。この犯行で女性が死亡、男性も軽傷を負った。

筧は駆け付けた警察に逮捕され、裁判で懲役27年が確定。移送中、報道陣に向けてVサインをしたり、公判中も殺人を『何とも思わない』と述べるなど、最後まで反省の態度を見せることがなかった。

事件データ

犯人筧真一(当時46歳)
犯行種別殺傷事件
犯行日2020年10月6日
犯行場所兵庫県神戸市北区
ヤマト運輸「神戸北鈴蘭台センター」
被害者数1人死亡
判決懲役27年
動機解雇された腹いせ
キーワードVサイン

事件の経緯

ヤマト運輸・男女殺傷事件
事件現場となったヤマト運輸の集配施設

2020年10月6日午前4時過ぎ、兵庫県神戸市北区の山あいにあるヤマト運輸の集配施設「神戸北鈴蘭台センター」に悲鳴が響き渡った。そして、そのすぐあとには「おまえも殺したる!」という怒声。声の主は、昨日まで従業員だった筧真一(当時46)だった。

筧はまだ暗い集配センターに突然押しかけ、出勤直後のパート社員・広野真由美さん(当時47)と男性従業員(当時60)に次々に襲いかかったのだ。彼は事件前日の10月5日に、2年半働いたこのセンターを強制解雇されたばかりで、被害に遭った2人とは前日まで一緒に働いていた。

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筧は以前から勤務態度が悪かった。前日にもこの男性従業員から「荷物の仕分けが雑だ」と注意され、取っ組み合いのケンカになりかけた。広野さんが仲裁に入って治まったが、その際に筧が振り回した手が広野さんに当たった。

ヤマト側はこれを暴力沙汰と判断し、”決定的な理由” として即日クビを告げたのだ。突然の解雇宣告を受けた筧は、怒りにまかせてその日のうちにホームセンターへ行き、包丁2本と木製バット1本を購入した。

女性は死亡

筧真一/ヤマト運輸・男女殺傷事件

広野さんは全身十数カ所を包丁で滅多刺しにされ、その場で死亡。出勤直後、驚く間もなく車から降りたところを刺されたようだった。腹には包丁が刺さったままで、一部の傷は腹から背中に貫通するほど深く、ほぼ即死だったとみられた。

男性従業員は広野さんの悲鳴を聞いたあと、別の包丁に持ち替えた筧に襲われて左手を切る軽傷を負った。その後、包丁を落とした筧に車で追い回されたが、必死に逃げて警察に通報。筧は男性を追いながら、周囲に積み上がる宅配物や事務所の壁、センター敷地内の車両14台にガンガンぶつけていた。

ヤマト運輸の集配施設内での被害総額は、約740万円。

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だが、現場近くの路上で、駆けつけた警察官に『パトカーに軽乗用車をぶつけた』として、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された。筧は取り調べで「人を刺したり散々なことをしたあとで、どうせ逮捕されると思い、パトカーとぶつかった」と供述した。

逆恨みの犯行だった

兵庫県警の調べに対し、筧は2人を狙って襲ったことを認めた。解雇されたのが2人のせいだと思い、腹が立っていたのだという。しかし、実情は違っていた。

前日の暴力沙汰をクビの理由にしたいヤマト側は、警察で被害届を出すよう広野さんに促した。彼女はその日の昼に神戸北警察署に相談に赴いたが、被害届を出さずに帰っている。『手が当たったのも自分に向けられたわけではない』『自分は筧さんとの関係も悪くない』と、広野さんは明らかに筧をかばっていたという。

筧真一/ヤマト運輸・男女殺傷事件
移送中、報道陣にVサインする筧真一

10月9日、留置先の神戸北警察署から送検された際、筧は警察からマスクやフードの着用を勧められたのを拒否。車が移動を始めると、報道陣に向けて満面の笑みを浮かべながらVサインをした。その表情からは、反省や後悔など微塵もなかった。

犯人・筧真一について

ヤマト運輸・男女殺傷事件

筧真一は1974年、双子の兄として生まれた。
事件当時は事件現場の同センターから北西に約1.5km離れた、神戸市北区甲栄台1丁目の団地にひとりで暮らしていた。以前は別の棟で母親と弟と一緒に住んでいたが、2年ほど前に近隣との騒音トラブルから、筧ひとりが別の棟に引っ越したのだという。

同じ団地に住む女性(80)は、夜遅くに出掛け、朝方に帰宅する筧をよく見ていた。「いつも階段を2段飛びして上がるような元気のいい人。会ったらあいさつをしてくれ、礼儀正しかった。事件を起こす人には見えないのに…」と驚きを隠せない様子だった。別の男性(78)も「親子3人で一緒に買い物に行ったり、車で出掛けたり仲良い印象だった」と話した。

筧が2008年頃から1年ほどドライバーとして勤めていた運送会社社長の男性(55)は、「口数も少なく、目立たない感じの子だった。勤務態度はまじめだった」と振り返り、「ヤマトを辞めさせられた理由がよっぽど納得いかなかったのかよく分からないが、事件のことを聞いたときは衝撃的だった。あの頃と人が変わってしまったのかも」と話した。

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このように好意的な意見がある一方、過去には警察官に手を上げ、公務執行妨害で逮捕されたこともあった。かつての勤務先で同僚だった男性も「酒は飲まんが気が短かった。辞めたのも会社の敷地内で車の運転をミスって社長に怒鳴られ、キレ返したから」と振り返る。

勤務していたヤマト運輸でも「日頃の勤務態度が度々問題になっていた」と証言している。逮捕後も送検される車中でVサインを見せたり、公判中の態度も最悪で声を荒げることもあった。そして、反省の態度を一度も見せないまま懲役27年が確定した。

ヤマトは注意義務を怠った?

2022年12月27日付で、広野真由美さんの遺族4人がヤマト運輸を相手取り、計約1億1000万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴した。

事件前日に起きた『筧と男性従業員のトラブル』を仲裁した広野さんが怪我をした際、上司がこれを理由に筧を退社させようと考え、広野さんに病院や警察へ行くよう指示した。しかし、会社は筧に『広野さんが積極的に被害を訴えている』というような言い方をしていた。

このことを遺族側は訴状で指摘し、「上司の言動が男の逆恨みを招いたのに、会社は被害を受けないよう配慮する注意義務を怠った」と主張している。

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広野さんの夫は2023年3月下旬、読売新聞の取材に書面で応じ、「筧受刑者の粗暴さは目立っていたはずで、事件が起きる前に何か対処できたのではないか」と訴えた。ヤマト運輸は「係争中のため、コメントできない」としている。

裁判

2022年1月21日、神戸地裁で初公判が開かれた。裁判の主な争点は『何が犯行動機だったか』であった。

筧真一被告は「おれがやったのは間違いないだろ。全部しゃべってやるよ」などと起訴内容を認めた。検察側は冒頭陳述で、「犯行の背景には広野さんへの恋愛感情が満たされなかったことや、男性に対する怒りや不満があった」と述べた。弁護側は、犯行動機について『不当解雇への恨み』のみであると主張した。

上下黒色のジャージー姿で出廷した筧被告は、公判中にたびたび声を荒らげ、裁判長に注意される場面が目立った。冒頭、裁判長に名前や職業を尋ねられると「神様や」。冒頭陳述を朗読する検察官に「うそをつくんじゃねーよ」などとすごんだ。

「死刑にしてくれたらよかった」

2022年2月3日の判決公判で、神戸地裁は筧被告に懲役27年(求刑懲役28年)を言い渡した。裁判長は「強固な殺意に基づく執拗かつ残忍な犯行。計画性の高さも顕著」と非難した。

犯行動機については「筧被告は、被害者2人が結託して辞めさせるように仕向けたと思い込んだ」と認定。筧被告が女性に恋愛感情を持っていたとし、「愛情の裏返しとしての憎しみ」から殺害を決意したと判断した。

その上で「実際には結託はなく、被害者には何ら落ち度はない」と強調。退職時の上司の不適切な対応を受けて、筧被告が ”怒り” や ”女性への不信感” を募らせた点は認めつつも、「殺害という重大な決意には大きな飛躍があり、酌量すべき程度は小さい」とした。

また、「(筧被告が)殺人を『何とも思わない』と述べるなど、被告に反省の態度は見られない」と指摘したあと、「自分の罪を受け止めるようになってほしい」と説諭した。これに対し、筧被告は「何のことかさっぱりだ」と応じた。

判決を聞いた筧被告は、「死刑にしてくれたらよかった。喜んで死んでやる」などと発言していたが、量刑が重すぎるとして控訴した。

懲役27年が確定

2022年9月14日の控訴審判決で、大阪高裁は懲役27年とした一審判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。

弁護側は筧被告の犯行動機について、被害女性への恋愛感情の裏返しではなく、会社を不当に解雇されたことへの怒りと主張。裁判長は「被害者にまったく落ち度はない」と指摘したうえで、筧被告が会社を辞めた経緯は量刑に影響しないとした。

2023年1月12日、最高裁は筧被告側の上告を退け、懲役27年の判決が確定することとなった。

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