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大和連続主婦強盗殺人事件|祈禱師のお告げで開運のために殺人

庄子幸一/大和連続主婦強盗殺人事件 日本の凶悪事件

「大和連続主婦強盗殺人事件」の概要

祈祷師から「5つの仇なすものを排除しなければならない」とお告げを受けた庄子幸一(当時46歳)は、何を思ったか「5人殺せば運が開ける」と解釈してしまう。こうして交際中の山本章代を巻き込んで開運のための殺人が始まった。
しかし、2つ目の殺人を決行した直後に2人は逮捕となる。裁判では「祈祷師のお告げ」を説明するばかりで動機は解明には至らなかったが、庄子には死刑、章代には無期懲役が確定した。

事件データ

主犯庄子幸一(当時46歳)
死刑:2019年8月2日執行(64歳没)
共犯山本章代(当時38歳)
無期懲役
犯行種別強盗殺人事件
犯行日2001年8月28日、9月19日
場所神奈川県大和市
被害者数2人死亡
動機金と性欲
キーワード祈祷師のお告げ

事件の経緯

本事件の主犯・庄子幸一は、仕事もせず1998年頃から鶴間駅近くのパチンコ店に通う日々を送っていた。そんな2000年5月、庄子は東京都江戸川区の知人女性(当時60)が住むマンションを訪れる。この時、庄子は女性を強姦したうえに現金約12万円とキャッシュカード2枚を奪った。

犯行後、庄子は奪ったキャッシュカードを使い、銀行ATMから現金425万円を不正に引き出した。この事件で知人女性は約1週間の怪我を負った。

山本章代/大和連続主婦強盗殺人事件

その翌月の6月某日、庄子は鶴間駅近くのスナックで働く山本章代と知り合う。章代は2人の子供を持つ主婦であったが、駆け落ちして庄子と交際を始めた。2人は陶芸教室を開いて生計を立てようとしたが、上手くいかず生活費に困窮した。

同月、章代の知り合いで横浜市内に住む女性が、金銭トラブルに悩んでいるのにつけ込み、庄子が弁護士になりすまして接近。女性から銀行のキャッシュカードを盗み、百数十万円を引き出した。

その後も庄子は2件の窃盗・放火事件を起こしている。

  • 8月31日、横浜市に住む横浜市職員の男性(当時54)宅に侵入。現金約11万円などを盗み、証拠隠滅のために押し入れに放火、木造2階建て住宅約120平方メートルを全焼させた。
  • 9月29日、横浜市の会社員男性(当時61)宅に侵入して現金約3万円などを盗み、放火して木造2階建て住宅約100平方メートルを全焼させた。

その後、11月頃から翌2001年6月頃まで、2人は東北や関東地方の各地を転々とし、金が無くなると窃盗や無銭宿泊をくり返していた。2001年5月には群馬県安中市内のビジネスホテルに2泊し、宿泊費など10万円以上を支払わず姿を消していた。

最初の殺人

このように立て続けに悪事を働いてきた2人だったが、人の命を奪うまではしなかった。だが、このころ人生相談のために通っていた祈祷師から ”あるお告げ” をもらったことで、庄子の犯行は凶悪なものに変わっていく。

  • 「世の中に出るためには、5つの扉の鍵を開けなければならない」
  • 「押さえつけている5つの仇なすものを排除しなければならない」

祈祷師が2人に告げた内容は、このようなものだった。これは「(庄子の人生には)5つの障害があって、それを取り除く必要がある」という意味だが、庄子はこれを曲解してしまう。彼は「5人殺害すれば運が開ける」と捉え、章代の知人5人を殺害することを提案した。

2001年8月28日午後2時半頃、庄子(当時46)は章代(当時38)と共謀して、神奈川県大和市の主婦・林弘子さん(当時54)の住むマンションに侵入する。章代は林さんと健康食品の訪問販売を通じた知り合いで、林さん宅を頻繁に訪れていた。

侵入はその関係を利用したものだった。まず、章代が林さん宅を訪ねて部屋に入る。この時、玄関の鍵は開けた状態にしておき、2人が雑談している最中に庄子が押し入るのだ。

当初、庄子は暴行を加えて強姦するつもりだったが、抵抗されてこれを果たせなかった。庄子はベルトで林さんの首を絞め、出刃包丁で腹部を突き刺して殺害。現金約23万円やキャッシュカード3枚が入ったリュックサックを奪った。そして盗んだキャッシュカードから現金40万9千円を引き出した。

こうして最初の殺人に手を染めた庄子だったが、9月4日には過去の窃盗などの容疑で指名手配された。

  • 江戸川区の事件:警視庁から強盗容疑で指名手配
  • 横浜市の事件:神奈川県警から窃盗容疑で指名手配
  • 群馬県安中市の宿泊費踏み倒し:群馬県警から詐欺容疑で指名手配

2つ目の殺人事件

9月19日午前10時40分頃、庄子は再び章代と共謀し、大和市の主婦・大沢文子さん(当時42)のマンションに侵入した。大沢さんと章代は、それぞれの子供が同じ小学校に通っていたことから顔見知りだった。

前回と同じ手口で侵入した庄子は、大沢さんの腰にスタンガンを押し付け、その場に押し倒した。それからペティナイフを突き付け、両手首と両足首を粘着テープで縛ったうえで強姦。さらに顔全体に粘着テープを幾重にも巻き付け、水を張った浴槽に押さえつけて窒息死させた。そして現金6万円と通帳の入ったポーチを奪った。

大和連続主婦強盗殺人事件
事件当時の新聞記事

祈祷師のお告げを「5人を殺害すること」と解釈した庄子には、今後あと3人の殺害が必要なはずだった。だが最初の被害者・林さんの殺害時、マンションのエレベーター内の防犯カメラには庄子と章代が映っており、銀行ATMで現金を下した際の防犯カメラ映像にも2人の姿があった。

そのため、捜査本部は2人の犯行と断定し、9月下旬に「林さん殺害事件」で指名手配、25日に公開捜査に踏み切った。こうして寄せられた情報から、行動範囲を絞り込み捜査は続けられた。

そして26日午後3時過ぎ、伊勢原駅で林さんに対する強盗殺人容疑で2人を逮捕。10月18日には、大沢さんへの強盗殺人容疑でも再逮捕となった。庄子は取り調べに対し、「祈祷師のお告げに従い、殺害を決意した。殺人自体が目的だった」と主張した。

2002年1月28日に裁判が始まったが、その公判中の2003年3月5日、神奈川県警は庄子が横浜市で起こした2件の窃盗・放火事件(2000年8月31日と9月29日)でも再逮捕した。しかし横浜地検は3月25日、「すでに強盗殺人罪で死刑を求刑しており、放火・窃盗事件の被害者があえて起訴することを望んでいない」として起訴猶予処分とした。

また、庄子は公判中の2002年11月頃、別の殺人の告白をしている。内容は「1999年1、2月頃、山梨県内の知人の男と、東京都江東区(または江戸川区)に住む男性のマンションを訪問した際、覚せい剤取引をめぐるトラブルからこの男性を殺害した」というもの。他にも横浜、川崎市での放火・窃盗、強盗など6件の余罪があるということだった。
弁護人は2003年1月24日、これらの告白について横浜地検に上申書を提出。しかし神奈川県警の捜査では、該当する殺人事件は見当たらなかった。強盗についてもあいまいな供述があった。

庄子幸一のその後:死刑執行済み

庄子幸一死刑囚/大和連続主婦強盗殺人事件
庄子幸一

2007年11月6日の最高裁判決で死刑が確定した庄子は、東京拘置所に収監された。収監中、庄子は死刑囚に対するアンケートに以下のような回答を寄せている。(原文ママ)

「書けない。あまりにも恐そろしく 怖わくて 書くことが出来無い。(中略)毎日毎日 自分の死のあり方を見つづけている。僕自身 自分を罰する如く毎日毎日何千回も何万回も殺し続けています。謝罪の絶叫を被害者の魂に届くまで叫びつづけます」

「許して下さい。許して下さい。許して下さい。赦しのない時間の中で、貴女方に語りかけることを私に許して下さい。いつの日かこの獄中に終わる命ですが。(中略)我が悔の想いが届く日まで。魂があると信じて生きている限り私を責め来る声に耳を澄ます。そう命のある限り!」

アンケートの最後には次のような歌も記している。

「歪みなき悔ゆる叫びの声透る命を賭して血は流れけり」

庄子幸一の獄中の作品

庄子幸一死刑囚の作品「書(駱駝の群れ)」2007年/大和連続主婦強盗殺人事件
庄子幸一死刑囚の作品「書(駱駝の群れ)」2007年
庄子幸一死刑囚の作品「みどり亀」2007年/大和連続主婦強盗殺人事件
庄子幸一死刑囚の作品「みどり亀」2007年

上記作品は、「極限芸術ー死刑囚は描く」に収録された庄子死刑囚の作品である。庄子は獄中で響野湾子(きょうの わんこ)というペンネームで歌人として活動していた。

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庄子死刑囚は死刑確定から約12年が経った2019年8月2日、再審請求中ではあったが死刑が執行されている。(64歳没)

この日は「福岡3女性連続強盗殺人事件」の鈴木泰徳死刑囚も同時に執行となっている。

裁判

2002年1月28日、横浜地裁の初公判が開かれた。

庄子幸一被告が殺害など起訴事実のほとんどを認めていたため、犯行動機の判断が焦点となっていた。庄子被告は動機に関して「知人の祈祷師から『頭を押さえ付けている悪がある』と示唆された」などと、不可解な説明に終始した。

また、犯行については「ひとりで行った」と述べ、共犯の山本章代被告が「殺害には関与していない」と主張。章代被告は「認めます」とだけ答えた。

冒頭陳述で検察側は、犯行の動機について「アパートの家賃を督促されるなど、金に困った末の強盗目的」と指摘した。

2月25日の第2回公判で、弁護側は動機について「金取りや怨恨目的の殺人ではない」と主張。被告らが犯罪を犯した背景として、2人が足しげく通っていた祈祷師の存在に触れ、「事件の本質を解明するには、この祈祷師との関係や被告人らの深層心理を明らかにする必要がある」と述べた。

庄子と章代は、人生相談のために2人で訪れた祈祷師から「押さえつけている5つの仇なすものを排除しなければならない」などと助言を受けていた。

また、章代被告の弁護人は「彼女は過去の宗教的体験から、超自然的な存在を信じやすい素地があり、犯行を決意するに至る心理状況には、庄子被告の説得によるマインドコントロールが作用している」と主張した。

9月に行われた被告人質問で庄子被告は、祈祷師から「言葉だけでなく “念” を受けた」と言い張った。だが、「『仇なすものを排除する』というのが、どうして殺害に結び付いたのか?」という質問に対して「自分でもはっきり答えられない」と返すなど、犯行との因果関係には口を閉ざした。

庄子被告に死刑を求刑

2003年1月8日の論告で検察側は、「両被告が定職に就かず、生活費や遊興費に困っていた」ことを指摘。最初の主婦を殺害した際、あえて夫の給料日直後を狙ったことや、2件とも室内を激しく物色していた点を挙げ、「強固な強盗目的があった」とした。

また、庄子被告が「知人の祈とう師に『連続殺人をすれば幸せになれる』と指示された」と説明したことに対し、検察側は「宗教を持ち出すことで真の動機を隠ぺいし、犯行をためらう章代被告を承諾させるための作り話」と断じた。

一方、検察側は章代被告について、「被害者と知人である立場を利用して室内に入り込む手口を提案したり、殺害の実行にも積極的に加わった」と認定。「知人をだますという卑劣さは悪質極まりなく、庄子被告とは異なる固有の責任がある」と非難した。

そして「一生許せない」と厳罰を望む遺族の調書も読み上げ、「犯行態様はこれ以上ないほど凶悪かつ残虐。死刑に処するのが相当」と結論づけた。

一審判決は死刑

1月29日の最終弁論で、庄子被告の弁護人は「祈とう師に『連続殺人をすれば幸せになれる』と言われて実行した。動機は金ではなく、殺人そのものだった」と改めて主張。章代被告の弁護人は「庄子被告に巧妙かつ執ように誘われて手を下した。量刑に配慮してほしい」と情状酌量を求めた。

最後に庄子被告は「章代には人生をやり直す機会を与えてほしい。自分の中で整理できないことがあって、遺族に手を合わせられないことが愚かだ」と述べた。章代被告は「罪深さを感じている。どんな刑を受けても償いのしようがない」と、遺族に謝罪する手記を読み上げた。

2003年4月30日の判決公判で、横浜地裁は庄子被告に死刑、章代被告に無期懲役を言い渡した。

裁判長は庄子被告を「犯罪熟練者」と呼び、「章代被告を犯行に巻き込み、罪は余りに深い」と断じた。そして「私利私欲から出た極悪非道の犯行で、反省の情も見られない。終始主導的な役割を担うなど、犯した罪は余りにも深い。死刑をもって臨むほかない」と結論づけた。

庄子被告の動機説明には「はなはだ信じがたい不自然なもの。重大犯罪に対する罪業への恐れを軽減するためのまやかし」と指摘した。

章代被告については「顔見知りの被害者を油断させるなど、章代被告なくしてありえなかった犯罪」と指弾。そのうえで、「神秘的な力を信じやすい傾向につけ込まれ、庄子被告の指示に従い行動した。立場は従属的で、庄子被告の責任とは格段の差がある。改善更生していく可能性がある」と情状を酌んだ。

判決が言い渡された時、ずっと無表情だった庄子被告は、章代被告が死刑を免れたことに安心したのか、彼女のほうを向いて笑みを浮かべたという。庄子は判決後、「(章代には)助かってほしかった」と弁護人に話している。

章代被告は判決後「償いもできず、おわびするしかない」と、泣きながら遺族への謝罪を口にした。

庄子被告側は、「事実認定が正確でなく、事件が解明されていない」と控訴。検察側も章代被告の無期懲役判決に対し控訴した。

最高裁で死刑が確定

控訴審で庄子被告の弁護人は、「犯行時、心神耗弱だった」と主張。一方、検察側は一審で無期懲役が下った章代被告に対し、死刑を求めた。

2004年9月7日、東京高裁は両被告の控訴を棄却、両被告の一審判決を支持した。
裁判長は「精神の異常をうかがわせる事情は認められない」と庄子被告側の主張を退け、「凶悪・非道な犯行で、被告らは人としての情を持ち合わせていないと言うほかない」と述べた。章代被告については「庄子被告に巧みに利用された面もある」と認定し、検察側の控訴を棄却した。両被告は上告している。

最高裁判決

章代被告は上告を取り下げたため、無期懲役が確定した。

2007年10月2日の最高裁弁論で、弁護側は「庄子被告には精神障害があり、完全な責任能力はなかった。反省もしている」として、死刑の回避を求めた。検察側は「精神の異常はなく、反省の態度はない」として、上告棄却を求め結審した。

2007年11月6日の最高裁判決において、庄子被告側の上告が棄却されたため、死刑が確定となった。

裁判長は判決理由で「確定的な犯意を持って周到に準備し、何ら落ち度のない被害者を暴行・惨殺しており誠に凶悪。わずか3週間のうちに連続的に敢行され、地域に与えた衝撃も計り知れない」「自己の性欲と金銭欲を満たすため、一瞬にして被害者の平和な家庭を崩壊させた。落ち度のない被害者に連続的に行った凶悪な犯行で、刑事責任は重大」と非難。「反省し、共犯者の無期懲役が確定していることなどを勘案しても、死刑とせざるを得ない」と結論付けた。弁護側の心神耗弱主張については、「確定的な犯意の下、周到な準備をしている」と退けた。

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