首都圏連続不審死事件
2009年8月6日、埼玉県富士見市の月極駐車場内の車中で、男性が死んでいるのが発見される。一見、練炭自殺に見えた事案だが、”車の鍵が見当たらない” など不審点が多く、埼玉県警は捜査を開始。その結果、男性と関係のあった木嶋佳苗(当時35歳)の名前が浮上する。
木嶋は「婚活サイト」で知り合った男性に、次々と結婚詐欺を仕掛けて多額の金を騙し取っていた。そして、返済を逃れるため練炭自殺を装って殺害していたのだ。
およそモテるとはいえない風貌の木嶋に、なぜ男たちはいとも簡単に騙されたのだろうか・・・?
事件データ
犯人 | 木嶋佳苗(逮捕時35歳) |
犯行種別 | 連続殺人事件 |
犯行日 | 2008年~2009年 |
場所 | 東京都、千葉県 |
被害者数 | 3人死亡 |
判決 | 死刑:東京拘置所に収監中 |
動機 | 結婚詐欺 |
キーワード | 婚活、セレブ気取り |
事件の経緯
北海道で生まれ育った木嶋佳苗は、1993年、20歳前で上京して以降、複数の男性と愛人契約を結ぶことで贅沢な暮らしを維持してきた。そんな彼女が30歳を超え、”男性と知り合う場” として選んだのが婚活サイト「マッチングドットコム」だった。
2008年5月に登録したこのサイトで、長野県の男性A(40代)と知り合う。Aとは2008年8月24日頃から12月10日頃までの間、複数回メールをやり取りをしていたが、木嶋は「真剣に結婚を考えているので、大学の学費等を支援してほしい」とねだった。
だが実際は大学などへは通っておらず、結婚さえ考えていなかった。彼女はただ単に生活費、それも贅沢ができるだけの金が欲しかっただけなのだ。ところがAは「真剣に結婚を…」という言葉に騙され、回数にして6回、合計130万円を木嶋に振込んでしまう。
静岡県の男性B(50代)も、同じ手口に騙された。2人は8月24日頃から12月23日までメールのやり取りをし、やはり木嶋は「真剣に結婚を考えている」という言葉を武器に、大学の学費等と称して合計190万円を振り込ませた。
その後の2009年1月10日、木嶋とBは池袋のホテルで宿泊したが、Bは財布から5万円を抜き取られた。Bは木嶋に勧められたチョコレートを食べたあと意識がなくなり、目覚めた時には5万円がなくなっていたという。
男性A、男性Bとも大変な被害に遭ったが、2人はまだ運が良かったといえる。なぜなら木嶋はこれ以降は、金づるにした男たちの命を次々と奪っていくのだ。
1.寺田隆夫さん殺害
都内の会社員・寺田隆夫さん(53歳)は、2008年6月上旬に木嶋と知り合い交際を始めた。
それから半年を過ぎた2009年1月30日、木嶋は東京都青梅市の寺田さん宅を訪れる。この日までに寺田さんは700万円以上を木嶋に援助していたが、それはもちろん ”結婚を前提” にしていたからだった。
だが、木嶋に結婚の意思などない。もしそれがバレると、援助してもらった金の返金を要求されることは目に見えている。木嶋はなんとかしなければと思い、青梅市までやってきたのだ。
翌31日、木嶋は寺田さんを眠らせたうえで複数個の練炭を燃焼させた。たちまち部屋は一酸化炭素に包まれ、寺田さんは一酸化炭素中毒により死亡した。
2月4日午後6時頃、寺田さんの上司が自宅を訪れ、布団の上であおむけに死んでいる寺田さんを発見する。寺田さんが最後に出勤したのが1月30日で、無連絡で欠勤を続ける寺田さんを心配した上司が様子を見に来たのだ。窓や玄関ドアはすべて施錠されていたという。
寺田さんの携帯電話に登録された女性は母親・姉・木嶋の3人だけだった。このことから警察は木嶋に事情聴取した。木嶋は警察に「読書や音楽鑑賞などの趣味が一致したので、経済的支援を受けることを条件に付き合いを始めた。しかし訪ねてみると、バスルームなど全体的に家の中が汚く感じられ、結婚相手としてがっかりしたので別れを告げた。その際、1000万円の通帳と現金400万円を受け取った」と説明していた。
警察はこの話を信じ、「別れを悲観しての自殺」と断定。そして、司法解剖もしなかった。
このことが、のちに捜査を難航させることになる。司法解剖をしなかったせいで、殺害に睡眠薬を使ったかどうか永久にわからなくなってしまったのだ。
また、寺田さんの家からは合鍵がひとつなくなっていたが、これも警察は追及することはなかった。寺田さんは死亡する直前まで、木嶋の銀行口座に計1700万円を振り込んでいた。
2.安藤建三さん殺害
寺田さんと知り合った2008年6月上旬、木嶋には交際を始めた男性がほかにもいた。それは千葉県野田市に住む安藤建三さん(80歳)である。
木嶋は安藤さんの家に複数回訪れて、2008年10月頃に安藤さん所有の絵画4点を盗んでいる。これは、安藤さんの父親(画家の安藤義茂さん)の作品で、安藤さんの母親が描かれた大事なものだった。
さらに木嶋は2008年12月26日、安藤さんのクレジットカードで勝手に7万円ほど買い物をしている。
このようなことが重なり、安藤さんは2009年3月17日に木嶋にメールで「返事次第では法的措置も辞さない」と警告をした。焦った木嶋は安藤さんのご機嫌を取るために、嘘の旅行話を持ちかけたりもしたが、4月17日には安藤さんの口座から、勝手に30万円を引き出すなどやりたい放題だった。
5月15日午前9時頃、木嶋は安藤さんに睡眠薬を飲ませて眠らせた。そして部屋で練炭複数個を燃焼させて、一酸化炭素中毒で殺害。この時、練炭は火災を起こし家は全焼した。司法解剖の結果、安藤さんの遺体には気道熱傷の跡がみられた。
木嶋はその後も、安藤さんの口座から約190万円を引き出している。
2009年7月中旬には、別の男性Cに対して「真剣に結婚を考えている」と偽り、料理学校の受講料という名目で金を騙し取ろうとした。しかし、Cはこの嘘を見破ったため失敗に終わっている。
3.大出嘉之さん殺害
2009年7月中旬、東京都千代田区に住む大出嘉之さん(41歳)と知り合う。木嶋は、男性Cと同じ手口で大出さんから金を騙し取ろうとした。
2人は東京都内で2度ほど会い、大出さんは ”料理学校の受講料” として470万円を木嶋に貸した。だが木嶋には当然返す気などなく、この返済を逃れるため殺害を計画する。
8月5日、木嶋は旅行に行くという名目で大出さんと待ち合わせた。もちろん旅行など真っ赤な嘘である。木嶋は大出さんに睡眠薬を服用させて眠らせ、埼玉県富士見市の月極駐車場内に停めた車の中で練炭を燃焼させた。大出さんは一酸化炭素中毒で死亡、遺体は翌6日に発見された。
埼玉県警は、車の鍵が見当たらないなど自殺にしては不審点が多かったことから、捜査を開始した。
大出嘉之さんはプラモデル愛好家で、その世界ではよく知られた人だった。ホビー会社が主宰する大会で入賞した経験も持つほどの腕前で、「トーマモデルズ」の名義で模型の製作・販売も請け負っていた。
大出さんはトーマというハンドル名でブログを開設していて、殺害される20時間前にも書き込みをしている。
「今夜から2泊3日で相手と婚前旅行に行きます」 (相手=木嶋)
「結婚したらしばらく模型は無理でしょうけど、パワーアップしていつか必ず復活しますよ」
埼玉県警はこの書き込みを見て、自殺ではないと確信したという。この書き込みをしたブログはもうないのだが、魚拓が残っていた。(↑上記リンク)
別のHPはまだ残っているようなので、以下にリンクを貼っておく。
懲りずに犯行を続け…
その後も木嶋は同様の手口で2人の男性から金を騙し取ろうとしたが、嘘を見破られたり、相手家族に反対されるなどして失敗。だがこれに懲りない彼女は、婚活サイトで知り合った男性宅で同居を始め、男性から450万円を受け取っていた。
大出さんの不審死を受けて、埼玉県警が捜査をした結果、”大出さんが木嶋と交際していた” ことが判明する。そして木嶋には他にも多数の交際相手がおり、そのうちの何人かが不審死を遂げていることも分かった。
埼玉県警は、「木嶋が結婚詐欺をおこなっていた」と断定し、9月25日に詐欺の容疑で逮捕。そして3件の殺害に関しても順次逮捕されることとなる。
- 2010年2月1日、埼玉県警が大出さん殺害の容疑で逮捕
- 2010年10月29日、警視庁が寺田さん殺害の容疑で逮捕
- 2010年12月1日、千葉県警が安藤さん殺害容疑で逮捕
警視庁は寺田さん殺害について、捜査ミスを認めた。この事件では自殺と断定して司法解剖も行っていなかった。
この一連の殺人事件が起こる前の2007年8月頃、木嶋は千葉県松戸市のリサイクルショップ経営の男性(当時70)と交際していたが、この男性もすでに死亡していた。
男性は自宅2階のベッドで死亡していたが、室内が物色されたり、争ったりしたような形跡はなかった。検視では「心臓死」とされ、司法解剖は行われていない。
2009年秋に、木嶋がこの男性から計7380万円を受け取っていたことが判明。千葉県警が再捜査をしていたが、練炭や七輪なども発見されず、死因は病死、「木嶋の関与はなかった」と断定した。この男性の死亡後、困窮した木嶋は2008年5月に婚活サイトへ登録している。
また木嶋は2003年3月、ネットオークションに「パソコンを売る」と書き込み、八丈島の男性から10万円を搾取した容疑で逮捕され、懲役2年6月(執行猶予5年)の有罪が確定している。
木嶋佳苗の生い立ち
木嶋佳苗は1974年11月27日、北海道の中標津町で生まれ、小学校に上がる頃に別海町に転居した。
父親は大学職員、母親はピアノ教師、祖父は町会議員も務めた司法書士と名士の家庭で、比較的裕福だった。下に弟が1人、妹が2人いる。母親とは性格的に合わなくて、確執があったという。
子供の頃はピアノを習い、地元のコンクールに出場するほどの腕前だった。地元の中学校を経て別海高校に進学。高校在学中は「大人の男とホテルから出てきた」といった噂が絶えなかった。このころ、知人の通帳を盗んで金を引き出し、窃盗罪で逮捕されている。
これについて、木嶋は「交際していた40代男性に指示されてやった」と言っている。父親が700万~800万円ほどを弁償、本人は保護観察処分となっている。
1993年、20歳前で上京して目黒区祐天寺に住んだ。ケンタッキーフライドチキンにも就職したが3カ月の研修で辞めている。翌年、渋谷の道玄坂で声をかけられたことがきっかけで、男性との愛人契約で得た援助金で生活するようになる。このころ池袋のデートクラブにも通い始めた。
また、時期ははっきりしないが、東洋大学経済学部二部に合格するも履修届を出さず除籍となっている。(学費未納で中退という報道もある)
若い頃から盗み癖
木嶋は若いころから窃盗などの犯罪行為を行っている。彼女が盗んだ物の代金は両親が弁済していた。
- 1999年1月 化粧品の万引き
- 2000年3月 本の万引き
- 2001年4月 現金窃盗
- 2003年3月 ネットオークション詐欺(懲役2年6か月・執行猶予5年)
ネットオークション詐欺で木嶋佳苗が逮捕された際、鬱状態になった父親が車で激突死。「自殺ではないか」と言われている。
2008年5月に婚活サイト「マッチングドットコム」に登録してからは、結婚詐欺に手を染めるようになった。サイトでは、自分をセレブのように演出していた。
- 父親は東大教授
- 仕事はピアノ講師・フードコーディネーター
- 一人称は「わたくし」
- 車はベンツ
- シーズー犬を飼う
- ブランド品を並べて投稿
この婚活サイトで知り合った複数の男性から金を騙し取り、それがバレそうになると殺害していた。
- ハンドルネーム:kana1974
- プロフィール:36歳女性 東京23区在住
- 希望の相手:43~83歳の男性
<コメント>
音楽教室で講師をしていますが、現在大学院生でもあります。年の離れた男性に魅力を感じます。
のんびり楽しく、心身ともに満たされた豊かな人生を送るパートナーとして私を選んでくださる男性を探しています。
体型ぽっちゃりですが、色白で肌は綺麗と言われます。
木嶋佳苗は獄中結婚していた!
確定死刑囚として収監されて以降、木嶋は獄中結婚を3回もしている。
2015年3月2日、支援者の1人である東京都内の不動産会社勤務の60代のサラリーマンと獄中結婚したが、2016年に離婚。その後、逮捕前から知り合いだった男性と再婚し、元夫とは養子縁組した。
2018年1月には週刊新潮の編集部員と3度目の獄中結婚をして、「井上」姓となった。彼はそれまでの妻と離婚して木嶋と結婚したという。「”取材対象者” として接しているうちに、思いが募っていった」とのこと。
木嶋は、このような支援者の助けを借りて、獄中ブログを開設したこともあったが、2018年5月10日の投稿を最後に更新が止まっている。
木嶋佳苗はなぜモテる?
決して美人とは言えない木嶋が、なぜモテるのか?
小谷野 敦氏(作家・比較文学者)は「そもそも、女は外見でモテるわけではない。性的な営みに長たけている、言葉に長けている、教養もある」と木嶋を評している。
実際、彼女は文章が上手で何より達筆である。そして接した人みんなが言うのは「声がかわいい」。いわゆる「キャラの立った」人であるのは確かなようだ。
彼女は、本も刊行している。
裁判員裁判:一審は死刑判決
木嶋佳苗被告は、さいたま地裁・東京地裁・千葉地裁でそれぞれ起訴された。しかし、検察側がさいたま地裁での併合審理を裁判所側に請求し、これが認められた。
2012年1月10日、第一審初公判が開かれた。
木嶋被告は罪状認否で、詐欺事件については「結婚を前提とした支援だった」と主張、3件の殺人事件についても否認した。本事件では物的証拠が少ないため、検察側は状況証拠を提示した。
【3件の殺害に共通】
・現場に残っていた練炭等は、木嶋が犯行前に購入したものと同じメーカー
・被害者らが最後に会っていたのは木嶋
【寺田隆夫さん殺害について】
・寺田さんの家からパソコンの本体と鍵が持ち出されていた
・練炭は重いもので約20キロある。寺田さんは車や自転車を持っておらず、レンタカーを借りた記録もないため、本人が購入したとは考えられない。また、ネットでの購入記録もない
【安藤建三さん殺害について】
・遺体から通常の10倍以上の睡眠薬を検出。安藤さんには服用歴がなかった
・火災の一酸化炭素中毒なら喉に付着するはずの「炭の粉」がほとんどついていなかった
【大出嘉之さん殺害について】
・死亡現場である車の鍵がなかった。自殺前にどこかに捨てにいくことは不自然
・練炭に着火させたマッチ棒はあるのにマッチの箱がない。これも、自殺前にどこかに捨てにいくことは不自然
・大出さんの手に練炭の粉がついていなかった(手袋も見つかっていない)
弁護側は、寺田さんと大出さんについて「別れ話に悲観して、自殺した疑いがある」、安藤さんは「ヘビースモーカーだったので、失火による火災で死亡した疑いがある」と主張した。
24日の第9回公判では、ホテルで5万円を盗られた男性Cが「木嶋被告が持ってきたチョコレートを食べたら、意識を失った。起きたら財布から5万円がなくなっていた」と証言。
第16回~21回公判まで行われた安藤さんの審理では、建物火災を研究する大学教授が「出火原因が ”タバコの火の不始末” である可能性は非常に低い」と証言した。
第23回~第33回公判では、木嶋の被告人質問が行われ、殺害について改めて否認した。
木嶋は「1993年に18歳で上京し、当初ピアノ講師の仕事をしていたが、1994年からデートクラブなどで月150万円を稼ぐようになった。26歳までは20人弱の男性と愛人契約を結んでいた」と明かした。
2001年に松戸市のリサイクルショップ経営の男性と知り合い、合計約1億円を受け取っていたと言い、男性が2007年に死亡する直前、「月100万円以上かかる生活を変えることは難しいと思った。援助してくれる男性を探すのが一番と思った」と述べた。
木嶋は「収入は高級品の購入に使った。貯金はしたことがない」と説明。また、婚活サイトのプロフィールに ”学生” と書いたことについては、「学生の方が援助してもらいやすいと思った」と述べている。
”常識で考えればわかる”
3月12日の論告求刑で検察側は、間接証拠だけで認定できる例えとして、こんな話をした。
”夜明けに外を見ると一面の雪化粧。雪が降ったのを見ていなくても、夜中に降ったことが分かる”
「誰かがトラックで雪をばらまいた可能性もあるが、そんな必要もないし合理性もない。常識で考えてほしい」と裁判員らに語りかけた。
また、3人の殺害については「騙し取った金の返済を迫られる恐れから殺害した」と説明。寺尾さんが、”別れ話のあと1000万円以上の大金を渡した” との主張には「常識的に考えられない」と述べた。
4月13日の判決公判で、さいたま地裁は木嶋被告に死刑を言い渡した。
裁判長は、”3件の殺人事件で現場に残された練炭” と、”木嶋被告が事前に準備した練炭が同じメーカーのもの” であり、「偶然とは考えにくい」と指摘。「いずれも木嶋被告の犯行と推認できる」と認定した。
青梅市の寺尾さんについて「被害者は練炭を入手した形跡はなく、自殺の動機もない。犯行が可能なのは木嶋被告だけ」と述べ、”練炭は料理に使うために購入”という木嶋の説明は「不自然で信用しがたい」と断じた。
次に千葉県の安藤さんについて「多量の睡眠薬を服用しており、”失火により死亡した” との説明は困難」と検察側の主張を支持した。
そして、千代田区の大出さんについて「車の鍵がなく、大出さんの手に練炭の炭粉がついていなかった」との状況から他殺と認定、”死亡時間近くまで一緒にいた”、”現場からタクシーで帰宅した” などの事実から、「これだけでも木嶋被告が犯人であると、優に認められる」と述べた。
裁判長は最後に、「3人の尊い命を奪った結果は深刻で甚大。あまりにも身勝手で利欲的な動機であり、酌量の余地など皆無」と断罪。続けて「約6か月で殺人を3度もくり返し、生命を軽んじる態度は顕著。不合理な弁解に終始するばかりか、公判中も被害者をおとしめる発言をくり返した。真摯な反省はうかがえず、刑事責任は重大」と述べた。
木嶋側は、即日控訴した。
控訴審・上告審
2013年10月17日、控訴審初公判が行われた。
弁護側は「状況証拠だけで有罪が認定されている。自殺や失火で死亡した可能性が否定できない」として無罪を主張。検察側は控訴棄却を求めた。
2014年3月12日、判決で裁判長は寺尾さんの事件について「犯人は鍵を入手できた者。木嶋被告以外にいない」と指摘。現場の練炭等を木嶋が購入した事実も踏まえ、「木嶋被告が犯人でなければ説明できない」と指摘した。
他2人の殺害動機については「騙し取った金銭の返済を逃れるために殺害を決意した」と述べ、「自殺の動機はない」と指摘。そして、”状況証拠をもとに有罪” とした一審判決を支持した。木嶋は即日上告した。
最高裁で死刑確定
弁護側は「一審・控訴審は、間接証拠のみで有罪としている。男性らが自殺した可能性もある。殺人だとしても木嶋被告が犯人という立証は不十分」と訴えた。
検察側は、一審・控訴審には「不合理な点はない」として、上告を棄却するよう求めた。
2017年4月14日、判決で裁判長は「木嶋被告は被害者3人の死亡直前に2人だけで行動しており、被害者3人には自殺や事故死の可能性がない」と弁護側の主張を退け、状況証拠から有罪を認定した一審・控訴審の判断を支持した。
そのうえで「ぜいたくな暮らしをするため、真剣な交際を装い多額の金銭を受け取った」と指摘。返済や嘘の発覚を免れるため3人を殺害したと述べ、「不合理な弁解を続け、反省の態度を全く示さない」と批判した。そして「極めて悪質で結果は重大。死刑はやむを得ない」と述べ、上告を棄却。これにより、木嶋被告の死刑が確定することとなった。
木嶋は現在、東京拘置所に収監されている。
同じような事件が起こっていた
驚いたことに、この事件と瓜二つの事件が同じ時期に鳥取県でも起きている。
それは、2004年5月~2009年10月に上田美由紀が起こした鳥取連続不審死事件。この事件も交際した男性から金を巻き上げ、都合が悪くなった相手は殺害している。
木嶋が事件を起こした2008年~2009年ごろは、西と東で同じような殺人事件が同時進行していたことになる。ほかにも共通点は多く、どちらも犯人は30代半ばの太った女性で、2人とも死刑が確定している。