「ドーベルマン窃盗事件」の概要
逃げ出したドーベルマン、実は盗まれていたーー。
2022年5月8日、ドーベルマンの母子2頭が飼い主の家から逃げ出したというニュースが駆け巡った。このドーベルマンは2週間前にも逃げていて、その時は捜索に参加した動物愛護団体のメンバーが発見・保護していた。飼い主は逃げ出された教訓を生かして柵をワイヤで強化していたが、これを誰かに切られていると主張。しかし2回目とあって飼い主に避難が集まる中、仰天のニュースが飛び込む。なんと犬たちは逃げたのではなく盗まれていて、犯人は1回目に保護した動物愛護団体のメンバーだったのだ・・・!
事件データ
主犯 | 岡島愛容疑者(逮捕時29歳) |
共犯1 | 高橋里衣容疑者(逮捕時29歳) |
共犯2 | 佐藤徳壽容疑者(逮捕時51歳) |
事件種別 | 窃盗事件 |
犯行日 | 2022年5月8日 |
犯行場所 | 千葉県木更津市真里谷 |
逮捕日 | 2022年5月19日 |
キーワード | 動物愛護団体(一般社団法人) 「アニマルグリーンアップル」 |
「ドーベルマン窃盗事件」の詳細
2022年4月22日、千葉県木更津市の男性(79歳)が飼っているドーベルマン4頭(母犬1頭、子犬3頭)が逃げ出した。この時、ボランティアとして捜索に参加し、4頭を発見・保護したのが岡島愛(29歳)、岡島の夫、岡島の友人の3人だった。
岡島は、動物愛護団体「アニマルグリーンアップル」(一般社団法人)のメンバーで、自身もドーベルマンを飼っていた。
この直後から、岡島は ”動物愛護団体” として飼い主男性と接点を持ち続け、同じ団体のメンバー・高橋里衣(29歳)と共に「犬を譲ってほしい」と持ちかけていた。飼い主男性は交渉に応じ、4月28日、雄の子犬「ゴロウ」を引き渡している。飼い主男性は別の子犬1頭を千葉県内の人物に譲っており、手元に残ったのは母子2頭だった。
動物愛護団体「アニマルグリーンアップル」は、2018年10月11日にNPO法人(特定非営利活動法人)の認証を取り消され、一般社団法人として活動していた。理由は「改善命令に従わなかった」からだという。
上記リンクの「解散事由」には、「第43条の規定による設立の認証の取り消し」と書かれている。簡単に説明すると、「国が定める命令に違反したNPO法人は、NPOの権利を剥奪される」ということである。
「第四十三条 所轄庁は、特定非営利活動法人が、前条の規定による命令に違反した場合であって他の方法により監督の目的を達することができないとき又は三年以上にわたって第二十九条の規定による事業報告書等の提出を行わないときは当該特定非営利活動法人の設立の認証を取り消すことができる。」
ドーベルマン母子がまた逃走?
それから約2週間後の5月8日、このドーベルマンの母子2頭がまたいなくなる。
当初は前回と同様、”逃げ出した” ものと考えられていた。この騒動は全国的なニュースとなり、5月12日、岡島は前回の発見者としてテレビにインタビューされている。
この時、岡島は飼い主男性に対して批判的で、「どうせ、またいなくなると思っていた」とあきれ顔で応えていた。岡島は「今回は捜索に参加しない」と表明、その理由として以下のような説明をした。
- 飼い主男性宅の飼育環境がひどすぎると感じた
- それを警察にも強く訴えたが、その後何も変わらなかった
- 保護しても、また飼い主男性に戻されるだけ
※ 飼育環境については岡島愛の感想であり、本当にひどいかどうかは不明
ドーベルマンは飼い主に忠実で、「警戒心が強い」「甘えん坊」などの特徴がある。心を許した相手には人懐っこい一面を見せるという。だが体が大きく、見た目も怖いイメージのため、近隣では警戒されていたが、母子2頭は一向に見つからなかった。
岡島愛ら3人をドーベルマン窃盗で逮捕
そんな状態が10日ほど続いた19日、仰天のニュースが報道される。なんと岡島愛を含む動物愛護団体のメンバー3人が「窃盗」と「住居侵入」の疑いで逮捕されたのだ。そしてさらに驚いたことに、盗んだのは ”いなくなったドーベルマン母子” だった。
- 岡島愛(29)自称無職・千葉県松戸市稔台8丁目
- 高橋里衣(29)自称自営業・埼玉県草加市稲荷4丁目
- 佐藤徳寿(51)自称自営業・埼玉県越谷市蒲生西町1丁目
犬を盗んだ手口
盗んだ手口は、以下の通りである。
まず、5月4日から何度も「引き取った子犬のおなかの調子が悪い」「エサがあわない」と飼い主男性に電話で相談。そして、今まで与えていたエサを一緒に買いに行ってほしいと依頼する。
男性は引き渡し時に、「商品名」、「販売しているホームセンター名」、「空いたパッケージ」を渡しており、自分たちで購入するよう勧めたが拒否したという。それだけ緊急なのかと思いきや、指定してきたのは4日後の5月8日。当日も午前10時の予定が午後1時半に変更され、1台の車で一緒に行くことも拒否、それぞれの車でエサの購入に向かった。
購入後はホームセンターで解散し、男性がひとりで家に帰ったところ、ドーベルマン母子はいなくなっていた。犬の柵は、逃走防止のために補強したワイヤを3か所に巻いてとめていたが、それが外されていたという。
帰宅したのは2時半頃で、家を空けていたのはわずか1時間ほどである。男性は、飼育用フェンスに取り付けていたワイヤが外されていたことも含め、「逃げたのではなく、盗まれた」と主張していた。
犯人たちの素顔
岡島愛について
千葉県松戸市在住の岡島愛容疑者(29歳)。
札幌南陵高校を卒業後、22歳までススキノのニュークラブ(キャバクラ)「CLUB Generex(ジェネルー)」でホステスをしていた。その後、2016年3月からは電気通信株式会社で働き始め、27歳の時に結婚している。
逮捕時は、千葉県松戸市稔台8丁目在住で、動物愛護団体「アニマルグリーンアップル」のメンバーだった。
佐藤徳寿について
動物愛護団体(一般社団法人)「アニマルグリーンアップル」の代表理事を務める佐藤徳寿容疑者(51歳)。
Youtubeでは ”ノリツッコミ” するなど、ひょうきんにふるまっている。しかし、彼を知る人によると、別の一面も見えてくる。
「何しろ怖い。ゴミ出しの時もいいかげんに出す。でも(怖いから)逆らわない方がいいねって…」
「(近所の人が)犬の鳴き声がうるさいって言いに行ったら、『自分だってうるさいだろ、ピアノが…』って逆に怒られたらしい」
”犬好きのひょうきんなおじさん” というだけではなかったのだ。
高橋里衣について
高橋里衣(29歳)は、埼玉県草加市稲荷4丁目にあるトリミングサロン「Gluck Lich(グリュックリッヒ)」の経営者。そして、他の2人と同じ動物愛護団体「アニマルグリーンアップル」のメンバーである。
店の口コミは「犬の相談に親身になってくれた」「ていねいだった」など好評なものが多い。しかし、「外飼いの客に犬を返さない」という、今回の事件にもつながるようなトラブルも起こしていた。
逮捕前のテレビのインタビューでは、「飼い主男性と一緒にエサを買いに行った」と明かしていて、彼女が ”家から連れ出す役” だったことがわかる。
愛犬家の起こした凶悪事件
愛犬家と聞くと、”動物好きないい人” というイメージがあるが、本事件のように犯罪を犯す者もいる。
今回のように、「(間違った価値観ではあるが)犬を守るために連れ出す」という、誰も傷付けない犯罪はまだいいほうで、「犬をダシにして金をだまし取り、バレそうになると殺す」という事件が過去に実際に起こっている。
大阪府の自称犬の訓練士・上田宜範は、犬好きな人を見つけては「犬関連の商売」の共同経営を持ちかけ、乗ってきた相手からその費用として金を騙し取っていた。そしてバレそうになると殺害、5人もの命を奪った。
この事件は1992~1993年に発生したが、ほぼ同じ時期に埼玉県でも愛犬家による殺人事件があった。
埼玉県熊谷市のペットショップ経営の男(関根元)は、当時まだ珍しかったシベリアンハスキーを「子犬が産まれたら高値で買い取る」と、つがいで法外な値段で売りつけていた。だが実際は難癖つけて引き取らず、そもそもぼったくり価格だったことから、苦情を言ってきた客らを4人を殺害していた。
埼玉愛犬家連続殺人事件|ボディーを透明に!遺体なき猟奇殺人事件
2人とも裁判では死刑が確定。特に埼玉の事件では妻も罪に問われ、夫婦そろって死刑判決となっている。
愛犬を殺された仇討ち殺人
もうひとつ、愛犬家が起こした殺人事件がある。こちらは金銭がらみではなく、愛犬を殺された恨みが動機である。
小泉毅は少年時代、飼っていた犬を野良犬と間違われて保健所に殺処分されていた。それから34年経った2008年、その仇討ちを果たして死刑確定となっている。彼の想定する ”責任者” である当時の厚生省官僚2人を相次いで殺害したのだ。
大事件を起こして自身も死刑判決となった小泉だが、「愛犬の殺処分」は彼の勘違いだった可能性がある。事件後、父親が語ったところによると、「野良犬と間違われて保健所に連れていかれたのではない」と証言しているのだ。