【4選】”幻聴”に支配された殺人者たち【危険】

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幻聴 事件まとめ

突然、頭の中で人の声が聞こえる「幻聴」。
原因は統合失調症、薬物の影響、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など様々ですが、その声の影響を多大に受け、殺人にまで至った事件があります。

幻聴は、それ自体が危ないというより、”幻聴が起こる精神状態”が問題です。彼らの精神は、すでに危険なレベルで病んでいて、その中の一部の人が何かのきっかけで事件を起こしています。彼らには専門医の治療が不可欠で、早くそうしていれば事件に発展しなかったと思えるケースもあります。

1.大阪此花区パチンコ店放火殺人事件

大阪此花区パチンコ店放火殺人事件

2009年7月5日、大阪市此花区のパチンコ店が放火され、5人が死亡する事件が起きた。翌日になって自首してきた男の名前は高見素直(当時41歳)、彼は「覚せい剤精神病」による幻聴があり、犯行はその幻聴の女 ”みひ” のせいだと主張した。

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高見は1991年頃から覚せい剤を使用し始め、半年ほどで覚せい剤取締法違反で逮捕された。そして1992年1月、懲役1年2か月(執行猶予3年)の判決を受け、これ以降は覚せい剤を使用していない。

半年ほどの使用にもかかわらず、数年経ったあとに「覚せい剤精神病」の症状が現れる。1998年頃から高見の耳に、見知らぬ女の声が聞こえるようになったのだ。

覚せい剤精神病

覚せい剤の使用を2~3か月続けると、統合失調症の幻覚・妄想と区別できない精神病症状が発現する。一度発現してしまうと、その後は再燃の度に発現しやすくなり、治まりにくくなる。

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このころ、高見は長距離トラックの運転手に転職したが、この仕事は厳しい勤務態勢だった。そんなストレスのせいなのか1~2か月たった頃、高速道路を運転中に突然頭の中で女性の声が聞こえた。
この声の主は ”みひ” と名乗り、”マーク” という集団に属しているという。 ”みひ” は最初の2~3日間は「左手を使うな」と指示していたが、高見が無視していると10日間ほどでほとんど聞こえなくなった。

このころから高見は、身体の不調や車の不調は ”みひ” の嫌がらせ、と思い込むようになった。その後、高見は職場を解雇され、妻にも離婚されてしまう。そんな大きい精神的負担のせいなのか、 ”みひ” の嫌がらせは、以前にもましてひどくなっていった。

2009年6月末頃、高見は「再就職できなかったり、自分にまともな生活をさせないのは ”みひ” の嫌がらせ」と考え、世間の人はみんな ”みひ” の手助けをしていると思い込むようになっていた。追い詰められた高見は、やがて復讐のための無差別殺人を具体的に考えるようになる。

それでも高見は、仕事が決まれば事件を起こさないつもりだった。そのため友人に仕事の紹介を頼んでいたが、その電話がかかることはなく、自身が決めたタイムリミットの7月5日午後2時頃に犯行を決意。その直前、高見は「かわいそうなことしなさんなよ」という ”みひ” の声を聞いたが、これを無視した。そして午後4時10分、バケツに入れたガソリンをパチンコ店に撒き、火をつけて逃走した。

高見は自首した理由について、「自分の犯行であることを世間に知らしめることが ”みひ” への復讐」と話している。これだけ大それたことをやってのけた自分にもう指示はできないだろう、というわけだ。

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高見は精神鑑定の結果、統合失調症と診断され、裁判では責任能力の有無が争われたが、彼に下った判決は死刑。現在は大阪拘置所に収監されている。

2.大阪心斎橋通り魔殺人事件

礒飛京三/大阪心斎橋通り魔殺人事件

2012年6月10日、大阪・心斎橋の繁華街で男女2人が無差別に殺害される事件が発生した。

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2012年5月24日に覚せい剤取締法違反で1年10か月の服役を終えた礒飛(いそひ)京三(当時36歳)は、地元・栃木県で仕事や住む場所を求めて親族・知人を頼るもすべて断られていた。そのため、以前刑務所で知り合った男の住む大阪に赴いたものの、紹介された仕事は違法なものだったことから栃木に帰ろうとした。

そんな礒飛の頭の中に幻聴が聞こえてきた。礒飛は19歳の時に覚醒剤を始め、その後遺症(覚せい剤精神病)による妄想・幻聴の症状があり、その声は「刺せ、刺せ」「包丁を買え」という物騒な内容だった。礒飛は自殺を考えて包丁を買ったが、自分を刺すことはできず、声に従う決意をする。

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午後1時頃、大阪・心斎橋で包丁を手にした礒飛は、そこを偶然通りかかっただけの男性(42歳)に切りかかり、さらに自転車を押して歩く女性(66歳)にも襲い掛かった。礒飛は幻聴に従い、2人を殺害したのだ。

駆けつけた警察によって逮捕された礒飛は、「人を殺せば死刑になれると思った」と話し、これが死刑になるための無差別殺人であったことを匂わせた。その後、裁判員裁判では希望通りの死刑判決が下されたが、すると礒飛は一転して死刑回避のため控訴する。

控訴審で遺族に「『自分には死刑がふさわしい』と言っておきながら、なぜ控訴したのか?」と質問された礒飛は、「ふさわしいが、死刑になるのは怖い」と答えている。

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そして注目の控訴審判決で、大阪高裁は死刑を破棄して無期懲役を言い渡す。最高裁もこれを支持したため、礒飛の無期懲役が確定した。

無期懲役に減刑された理由として、「犯行は覚醒剤後遺症による幻聴が原因であること」、「直前に包丁を購入していることから、計画性のない衝動的な犯行である」 との説明がなされた。

3.神戸・北区5人殺傷事件

神戸・北区5人殺傷事件

2017年7月16日の早朝、兵庫県神戸市北区で妄想に支配された青年・竹島叶実かなみ(当時26歳)が、無差別殺人を起こした。

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彼はまず自宅で祖父母を包丁や金属バットで殺害し、止めようとした母親にも重傷を負わせた。その後、表に出た竹島はたまたま見かけた高齢女性2人にも相次いで包丁で襲い掛かった。そのうち79歳女性が死亡、もうひとりは重症だが命は助かった。

こうして3人を殺害し、2人に重傷を負わせた竹島は、自宅近所の有間神社に行ったところで逮捕され、取り調べでは不可解な供述をくりかえした。事件の前日、専門学校時代の同級生女性の声で「神社に来てくれたら結婚する」「この世界の人間は、君と私以外は『哲学的ゾンビ』なんだよ」という幻聴を聞いた。さらに「家族を殺せ」と指示され、無意識に体が操られていたという。

哲学的ゾンビ

哲学的ゾンビ」とは、哲学用語で、外見は人と同じだが、自我意識がない存在をさす。

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このような供述を受けて、竹島は精神鑑定を受けることになった。鑑定は3回実施され、裁判で鑑定医は、それぞれ以下のような証言をしている。

  • 1度目の鑑定医統合失調症と診断し「犯行と元々の性格に直接の関係はなく、症状の中で行われた」と判断。竹島との面会は11回。
  • 2度目の鑑定医:「統合失調症は”疑い”で、症状は中等度。竹島には、思いとどまる判断がある程度可能だった」と診断。面会は1回(被告側が拒否したため)。
  • 3度目の鑑定医:「最初の鑑定は優れている。2回目の鑑定は不十分」と主張。「周りの人は人間ではない」という事件時の妄想はかなり荒唐無稽で、本人の性格からも飛躍があり、統合失調症の影響は「圧倒的」との見解。

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2021年11月4日、神戸地裁は竹島に無罪を言い渡した。これに遺族や被害者は納得いかず、大きく落胆。神戸地検11月16日、「重大な事実誤認がある」として大阪高裁に控訴した。

4.鹿児島県日置市5人殺害事件

鹿児島県日置市5人殺害事件

岩倉知広(当時38歳)は、子供時代から普段はおとなしいが何かあるとカッとなり同級生の間でも「1度キレると、止まらない」と言われるほど凶暴な男だった。

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2018年3月31日、鹿児島県日置市の実家で、彼は父親祖母殺害してしまう。原因は、働かない知広に対して祖母が言った小言に激高したためだった。祖母を殴った知広に対し、父親は「お前を殺して、俺も死ぬ」と包丁を向けたのだ。かねてから息子を支えてきた父親だったが、このころにはもう限界だった。

数日後、2人と連絡がつかないことを心配して様子を見に来た親族2人殺害。さらに不審に感じて訪れた知人も手にかけてしまう。

5人を殺害した知広だったが、あえなく逮捕となり供述を始める。彼は父親を殺したことについては反省の意を示したが、他4人の被害者については「嫌がらせをくり返し受けていた復讐のため殺害した。謝罪するつもりはない」と話した。

母親によると、2002年7月に1年間勤めた自衛隊を辞めて以降、「誰かに監視されている」「俺の悪口を言っているだろう」などと言うようになったという。このころから彼には、幻聴が聞こえるようになっていたのだ。そして家庭内暴力が始まり、彼はひとりで住むことを余儀なくされた。

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知広の言う ”嫌がらせ” の内容については「水道水に毒を盛られて、歯がボロボロになった」「住んでいた街を乗っ取られた」などであったが、当然そんな事実はない。被害者同様に恨まれていた知広の叔父は「知広に直接何かを言ったことはない。被害者らとの会話で『知広は仕事をせず、家でゲームばかりしている』と言った程度だ」と証言した。

精神鑑定で「妄想性障害」と診断された知広は、父親以外の被害者4人叔父に対し ”自分を迫害する一派” だと思い込んでいた。妄想もここまでくると深刻で、彼には治療が不可欠な状態だった。しかし、知広は15年間ほとんど働かずにひとり暮らしのアパートに引きこもり、症状は悪化の一途を辿った。そして、事件は起こった。

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知広は一審判決で死刑が言い渡された時、親族に対して「お前のしてることは許されんぞ」と叫んで検察官に飛びかかろうとしたという。彼は即日控訴し、弁護人は控訴審に控えて独自の精神鑑定を行うとしている。

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