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ストーカー規制法改正の歴史

ストーカー規制法 事件まとめ

2000年「桶川ストーカー事件」を受けてストーカー規制法成立

ストーカー規制法は、桶川ストーカー殺人事件を契機に2000年(平成12年)5月24日に成立、11月24日に施行された。それまでは当事者同士の話し合いで平和的な解決が望ましいとされ、取り締まるにしても軽犯罪法違反ぐらいしかなかった。

だが、ストーカー問題の深刻さが社会に浸透していき、桶川ストーカー事件が発生したことで「命の危険に関わる事件に発展しやすい」と認識されるようになり、規制法の制定に辿り着いた。

桶川ストーカー殺人事件
桶川ストーカー事件の犯人・小松和人
桶川ストーカー事件

1999年10月26日、埼玉県桶川市で女子大生の猪野詩織さんが殺害された。
彼女は、元交際相手・小松和人を中心とする犯人グループからひどいストーカー行為を受けていた。

1999年1月に小松と詩織さんは知り合い、交際を開始。やがて小松が反社な人間であることに気付き、詩織さんは別れようとするが小松はそれを許さない。小松は詩織さんを束縛し、脅し、意のままにしようとする。

殺される恐怖まで感じていた詩織さんだったが、意を決して別れを告げると小松は仲間を引き連れ、家にまで押しかけて脅しをかけてきた。そしてここから悪質な嫌がらせが始まった。

詩織さんは両親とともに埼玉県警・上尾署に相談するも、担当部署は相談に乗らず。告訴までしているのに、捜査しないばかりか嘘をついてまで取り下げさせようとする。

そして10月26日、桶川駅前で詩織さんは小松の仲間に殺害された。小松はその後、北海道で自殺している。

殺人事件となって初めて ”まともな捜査” が開始されたが、この経緯に世間からの批判は相当なものだった。上尾署の警察官3人は捜査ミスを隠すため、「告訴」や別の書類の改ざんに手を染め、有罪判決を受けている。

この事件を受けて制定された、当時のストーカー規制法で規制される行為は以下の通りである。

  • つきまとい、待ち伏せ、押し掛け、うろつき
  • 相手の装いや行動を、メールや手紙などで伝えて、監視に気付かせる
  • 面会、交際や復縁を迫ったり、贈り物を受け取るよう強要する
  • 家の前での大声、クラクション、乱暴な言動など
  • 無言電話、連続した電話、メール、FAXの送りつけ、SNSへの書き込み
  • 汚物や動物の死体などの送付
  • 相手への中傷や名誉を毀損する内容を、文書やメールで届ける
  • 卑猥な電話やわいせつ写真の送付など、性的羞恥心の侵害

2013年「逗子ストーカー殺人事件」を受けた改正

2012年11月6日、神奈川県逗子市で起きた逗子ストーカー殺人事件を受け、ストーカー規制法は改正された。2013年6月26日に衆議院で可決、成立している。

この事件では加害者が大量の嫌がらせメールを送りつけていたが、現行の規制法ではそれを罰することはできず、加害者は野放し状態になっていた。

逗子ストーカー殺人事件
逗子ストーカー殺人事件の犯人・小堤英統
逗子ストーカー殺人事件

犯人の小堤英統は元交際女性に対し、度重なる悪質なストーカー行為の果てに女性を殺害、そして自身も自殺している。

2人は2004年に知り合い、一時は婚約までしていたものの女性側から別れを告げ、関係は終わっていた。その後、2008年に女性が別の男性と結婚したことを知り、嫉妬に燃えた小堤はストーカー行為を始める。

彼の行った嫌がらせは、異常な数の電子メールの送付だった。当初は「殺す」などの文言が入っていたため、逗子署は小堤を逮捕。そして2011年9月に懲役1年(執行猶予3年)の有罪判決が下された。

これで学習した小堤は、メールに”脅し”の言葉を入れずに送り付けるようになる。その数は驚くほどの多さで20日間で1000通を超えることもあった。だが脅迫ではない以上、逮捕することは現行の規制法では不可能だったのだ。

2012年11月6日、自身の40歳の誕生日に小堤は女性を殺害。正確な住所は探偵を使って入手していた。

主な改正点は以下のとおりである。本事件の加害者が行った「大量のメール送信」はつきまとい行為として規制されることになった。

  • 電子メールの連続送信」を、つきまとい行為に追加
  • (被害者の住所地だけでなく)加害者の住所地などの警察も警告や禁止命令を出せるようにする
  • 警察が警告を出したら被害者に知らせ、警告しない場合は理由を書面で通知する

2017年「小金井ストーカー殺人未遂事件」を受けた改正

小金井ストーカー殺人未遂事件/岩崎友宏
犯人の岩埼友宏

2016年5月に発生した小金井ストーカー殺人未遂事件を受けて、ストーカー規制法改正案が2016年12月6日に可決・成立、一部は2017年1月3日に施行された(全面施行は2017年6月14日)。

小金井ストーカー殺人未遂事件

2016年5月21日に東京都小金井市で発生した殺人未遂事件。
当時芸能活動を行ってた大学生・冨田真由さん(20歳)に対し、ファンを自称する岩埼友宏(27歳)がTwitterなどのSNS上でストーカー行為を繰り返した後、小金井市内のライブハウスにてナイフで刺殺しようとし重体に陥らせた。

冨田さんは、意識を取り戻し一命を取り留めたが、一部の神経が麻痺し、視野が狭くなるなどの身体的な後遺症に加え、男性恐怖症など心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの心的後遺症が残った。

2016年の主な改正点は以下のとおり。メールに加え、twitterやLINEなどの連続送信もつきまとい行為とみなすことができるようになった。

  • TwitterやLINE等のSNSでのメッセージの連続送信や、個人のブログへの執拗な書き込みを、つきまとい行為に追加
  • 罰則の強化
  • 非親告罪化
  • 緊急の場合、事前の警告や聴聞等を経ず、また被害者の申し出が無くとも公安委員会による禁止命令を可能とする
  • 禁止命令の有効期間の明文化(原則1年、延長可能)
  • ストーカー行為をする者に対し、相手方の個人情報等を提供する行為の禁止
  • 警察、司法関係者への被害者の安全確保、秘密保持義務の明記
  • 国や自治体に、被害者に対し民間滞在(民泊等)の支援、公的賃貸住宅への入居に関する支援に務めさせる

2021年の改正:GPSの規制

GPS

2020年7月30日の最高裁判決において、「元交際相手の自動車にGPS機器をひそかに取り付け、位置情報を探索・取得」する行為が、ストーカー規制法で規制する「住居等の付近において見張り」をする行為には該当しないと判決を下した。

これを受けて、2016年以来の改正案が2021年5月18日に可決・成立、6月15日より施行となった。

  • GPS機器等を用いた位置情報の無承諾取得等
    • 相手方の承諾なく、その所持する位置情報記録・送信装置(GPS機器等)に係る位置情報を取得する行為
    • 相手方の承諾なく、その所持する物にGPS機器等を取り付ける等の行為
  • 相手方が現に所在する場所の付近における見張り等(例:たまたま立ち寄った店に加害者が押し掛ける、たまたま宿泊したホテルに加害者が近くでうろつく)
  • 拒まれたにもかかわらず連続して文書を送付する行為(電話・FAX・電子メール・SNSメッセージに加え、拒否したにもかかわらず文書を連続して送付する行為。例えば、拒んだにもかかわらず、毎日自宅や職場に手紙を送る又は郵便受けに投函する)
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