2000年「桶川ストーカー事件」を受けてストーカー規制法成立
ストーカー規制法は、桶川ストーカー殺人事件を契機に2000年(平成12年)5月24日に成立、11月24日に施行された。それまでは当事者同士の話し合いで平和的な解決が望ましいとされ、取り締まるにしても軽犯罪法違反ぐらいしかなかった。
だが、ストーカー問題の深刻さが社会に浸透していき、桶川ストーカー事件が発生したことで「命の危険に関わる事件に発展しやすい」と認識されるようになり、規制法の制定に辿り着いた。
この事件を受けて制定された、当時のストーカー規制法で規制される行為は以下の通りである。
- つきまとい、待ち伏せ、押し掛け、うろつき
- 相手の装いや行動を、メールや手紙などで伝えて、監視に気付かせる
- 面会、交際や復縁を迫ったり、贈り物を受け取るよう強要する
- 家の前での大声、クラクション、乱暴な言動など
- 無言電話、連続した電話、メール、FAXの送りつけ、SNSへの書き込み
- 汚物や動物の死体などの送付
- 相手への中傷や名誉を毀損する内容を、文書やメールで届ける
- 卑猥な電話やわいせつ写真の送付など、性的羞恥心の侵害
2013年「逗子ストーカー殺人事件」を受けた改正
2012年11月6日、神奈川県逗子市で起きた逗子ストーカー殺人事件を受け、ストーカー規制法は改正された。2013年6月26日に衆議院で可決、成立している。
この事件では加害者が大量の嫌がらせメールを送りつけていたが、現行の規制法ではそれを罰することはできず、加害者は野放し状態になっていた。
主な改正点は以下のとおりである。本事件の加害者が行った「大量のメール送信」はつきまとい行為として規制されることになった。
- 「電子メールの連続送信」を、つきまとい行為に追加
- (被害者の住所地だけでなく)加害者の住所地などの警察も警告や禁止命令を出せるようにする
- 警察が警告を出したら被害者に知らせ、警告しない場合は理由を書面で通知する
2017年「小金井ストーカー殺人未遂事件」を受けた改正
2016年5月に発生した小金井ストーカー殺人未遂事件を受けて、ストーカー規制法改正案が2016年12月6日に可決・成立、一部は2017年1月3日に施行された(全面施行は2017年6月14日)。
2016年の主な改正点は以下のとおり。メールに加え、twitterやLINEなどの連続送信もつきまとい行為とみなすことができるようになった。
- TwitterやLINE等のSNSでのメッセージの連続送信や、個人のブログへの執拗な書き込みを、つきまとい行為に追加
- 罰則の強化
- 非親告罪化
- 緊急の場合、事前の警告や聴聞等を経ず、また被害者の申し出が無くとも公安委員会による禁止命令を可能とする
- 禁止命令の有効期間の明文化(原則1年、延長可能)
- ストーカー行為をする者に対し、相手方の個人情報等を提供する行為の禁止
- 警察、司法関係者への被害者の安全確保、秘密保持義務の明記
- 国や自治体に、被害者に対し民間滞在(民泊等)の支援、公的賃貸住宅への入居に関する支援に務めさせる
2021年の改正:GPSの規制
2020年7月30日の最高裁判決において、「元交際相手の自動車にGPS機器をひそかに取り付け、位置情報を探索・取得」する行為が、ストーカー規制法で規制する「住居等の付近において見張り」をする行為には該当しないと判決を下した。
これを受けて、2016年以来の改正案が2021年5月18日に可決・成立、6月15日より施行となった。
- GPS機器等を用いた位置情報の無承諾取得等
- 相手方の承諾なく、その所持する位置情報記録・送信装置(GPS機器等)に係る位置情報を取得する行為
- 相手方の承諾なく、その所持する物にGPS機器等を取り付ける等の行為
- 相手方が現に所在する場所の付近における見張り等(例:たまたま立ち寄った店に加害者が押し掛ける、たまたま宿泊したホテルに加害者が近くでうろつく)
- 拒まれたにもかかわらず連続して文書を送付する行為(電話・FAX・電子メール・SNSメッセージに加え、拒否したにもかかわらず文書を連続して送付する行為。例えば、拒んだにもかかわらず、毎日自宅や職場に手紙を送る又は郵便受けに投函する)