「宮崎・高千穂6人殺人」の概要
2018年11月25日、宮崎県高千穂町で一家5人が惨殺される事件が起こった。その後、ひとり行方不明だったこの家の主・飯干昌大の飛び降り自殺が判明する。
原因は昌大の不倫に端を発した夫婦喧嘩と思われるが、仲裁に訪れた知人も同様に殺害されていた。そのため、被害者は6人になった。
容疑者とみられる昌大は自殺、事情を知る家族・知人も全員殺害され、この大惨事の真相は闇の中となってしまった。
事件データ
容疑者 | 飯干昌大(当時42歳)自殺 容疑者死亡のまま書類送検 |
犯行種別 | 大量殺人事件 |
犯行日 | 2018年11月25日 |
場所 | 宮崎県高千穂町押方 |
被害者数 | 6人死亡(家族全員と知人) |
動機 | 夫婦間のトラブル |
キーワード | 一家皆殺し |
事件の経緯
2018年11月25日、この日は宮崎県高千穂町で地域の消防団の忘年会が開かれ、所属の松岡史晃さん(44歳)も参加していた。午後1時頃から始まった忘年会は、休憩をはさみながらも長々と続き、お開きになったのは午後8時頃だった。
家に帰った松岡さんは、知人の飯干昌大(42歳)に電話で呼び出された。用件は、昌大夫婦の喧嘩の仲裁だったと思われる。昌大は寡黙で物静かな性格だったが、ため込んだものが爆発するような一面があった。そのため、時々夫婦は大喧嘩となり、そのたびに松岡さんは仲裁に出向いていた。
松岡さんの妻は、夜9時という遅い時間だったため、行くのを止めたそうだが、困った人を放っておけない性格の松岡さんは、昌大宅に向かったという。
しかし松岡さんは、2度と帰宅することはなかった…。
一家惨殺
翌26日朝、これまで無断欠勤がなかった昌大が、会社に連絡もなく休んでいた。会社から昌大の携帯に何度かけても応答がない。妻の美紀子さんにかけても同じだった。
心配になったものの、会社から昌大の家までは1時間近くかかる。そこで昌大の弟に連絡をとり、弟は警察に様子を見に行ってもらえるよう依頼。昼ごろになって警察から報告の電話があったが、その内容はとんでもないものだった。
昌大の家族は、一家全員惨殺されていたのだ。家の敷地内で遺体で見つかったのは、なんと6人。
- 昌大の父親・保生さん(72歳)
- 昌大の母親・実穂子さん(66歳)
- 妻・美紀子さん(41歳)
- 長男・拓海さん(21歳)建設会社勤務
- 長女・唯さん(7歳)
- 喧嘩の仲裁に向かった松岡さん
しかし、一家の主である昌大の姿は家のどこにもなかった。
警察は、「昌大が6人を殺害して逃亡した可能性がある」と考えて周辺を捜索。その結果、約3キロ離れた神都高千穂大橋の駐車場に昌大の車があり、さらに橋の下を流れる川で昌大の遺体が発見された。
会社の同僚たちは絶句した。なぜなら事件のあった25日は会社の慰安旅行で、昌大夫婦と長女の3人が仲良く過ごしているところを見たばかりだったからだ。
午後3時半に解散するまで楽しそうだった母子が、夜には惨殺されるなどとは想像もつかなかった。
遺体の状況
被害者の遺体の状況から、妻・美紀子さんと長女・唯さんは絞殺とみられた。他の4人については、凶器はナタとみられている。
父・保生さんは、頭部を切りつけられていた。その保生さんの布団の上に、長男・拓海さんが倒れ込んだ状態で亡くなっていた。これは祖父を助けようとして、殺害された可能性があるという。
母・実穂子さんの遺体だけは、唯一屋外で発見されている。遺体には激しい損傷があり、首が切断されていた。このことから、母親に対しては特に強い殺意がうかがえた。
知人の松岡さんは、喧嘩の仲裁に訪れたばかりに事件に巻き込まれたとみられている。松岡さんについても、頭部がほぼ切断された状態だった。
そして川で見つかった昌大は、飛び降り自殺の可能性が高く、6人の死亡に関わったとみられている。飛び降りた神都高千穂大橋の駐車場には、昌大の軽自動車が乗り捨ててあったが、遺書などは発見されていない。橋から水面までは115mあり、これは30階建てのビルに相当する高さである。
真相は闇の中
なぜ、このような悲惨な事件が起こったのか?
関係者全員が死亡しているため、事件の真相はわからない。しかし、いくつかの手がかりはあるようだ。
「昌大の不倫が原因」説
まず昌大夫婦の喧嘩については、数年前に昌大が起こした不倫が原因という見方がある。
普段は仲のいい夫婦で、昌大も妻の美紀子さんを大切にしていたという。数年前の会社の慰安旅行では、体調の悪い妻が長女と2人で行くように言ったが、昌大は「妻を残していけない」と旅行を欠席した、という話もある。
もし不倫が事実だとしたら、された側の美紀子さんは払拭しきれず、時々不満が溜まって喧嘩に発展したのかもしれない。
「昌大の被害妄想」説
昌大の幼馴染の証言では、以前昌大から電話があった時「美紀子は許せん、うちの両親は美紀子のかたをもつ」と怒っていたそうだ。しかし、その後会った時は長女が小学校にあがったことを嬉しそうに話すだけだった。
それが事件の3カ月ほど前に、偶然出くわした時には「美紀子が隠れて昔の男と会っていると、噂で聞いた」「俺はいつも仕事が終われば、まっすぐ家に帰っているのに、美紀子は俺のほうに女がいると疑う。これだけ真面目に仕事しているのに許せん」と険しい表情で話していたという。
また、仲裁に来て殺害されたとみられる松岡さんについても、昌大は妻・美紀子さんとの仲を疑っていたという噂もある。殺害された両親は、「昌大が精神的に不安定で、不倫は美紀子だと大声で言い、被害妄想のようになっている」と、周辺に話していたそうだ。
「互いの疑心暗鬼が原因」説
昌大夫婦が結婚したのは事件の10年くらい前で、昌大はバツイチだった。
夫婦を知る人は「2人は昔付き合っていた人に対し、互いに嫉妬しあって言い争うことがあった」と証言する。
美紀子さんが「夫が前の相手と連絡とっているみたい」と愚痴るのを聞いた人もいる。また、昌大が「嫁の動きが怪しい。SNSでなんかやっているみたいだ」と美紀子さんの不倫を疑うような話を聞いた人もいる。
容疑者・飯干昌大について
飯干昌大は事件の7年前、長女の唯さんが生まれたのを機に地元・宮崎に戻ってきた。そして地元の建設資材会社で、原木を輸送するトラック運転手として働くようになった。
昌大にはもうひとり、前妻との子供である長男の拓海さんがいる。前妻とは拓海さんが生まれて1~2年後に離婚している。その後、美紀子さんと再婚。事件当時は結婚して10年だった。
拓海さんは昌大と折り合いが悪い時期もあったが、その後、地元に戻って働くようになり、昌大は「よく帰ってきてくれた」と嬉しそうに話していたという。
当時の建設資材会社の社長は、「彼は普段から寡黙で、イジられると黙ってしまうタイプ。事件の予兆は感じられなかったが、何か溜め込んでいたものが爆発したのかもしれない」と語っている。
昌大のような「イジられると黙ってしまう」人は、おそらくシャレの通じない性格で、「普段はおとなしいが、キレると怖い」、そういうタイプの人だと思います。
このタイプの人を追い詰め過ぎてはいけません。このタイプがキレると、何をするかわからないからです。本事件では、それが最悪の形となってしまった気がします。
松岡史晃さんとの接点
松岡さんとの接点については、詳しいことはあきらかになっていない。
小学校時代からから2人を知る、上記の社長でさえ「どんな接点があったのか分からない」と話している。また、別の知人も「2人とも知っているが、交遊があったとは聞いたことがない」と首をかしげる。
しかし、昌大の知人がこんな証言をしている。昌大の勤務先と松岡さんの妻の勤務先とは取引があったという。松岡さんの妻の会社では、昌大の会社から運ばれた原木を加工しているのだ。昌大は原木を運ぶトラックの運転手だったので、2人は面識があったはずだ、というのだ。
この話のせいかどうかはわからないが、「昌大と松岡さんの妻は不倫していた」という噂まで流れている。
ちなみに、松岡さんの評判はいいものばかりである。
- 会うとあいさつをしてくれる、気さくで良い人だった(近所の女性)
- 地域の消防団の活動に熱心で、班長として若い団員をまとめていた
- 後輩からの人望が厚く、仕事もできる人だった(消防団の先輩)
- 頼まれると嫌と言えない性格
- 困っている人を放っておけない性格
松岡さんは熊本で長距離トラックの運転手をしていたが、それを辞めて五ケ瀬町に戻り、父親とともにトマト栽培に本格的に取り組むようになった。高校では農業科だったので、「高校時代の勉強が生かせる」と笑って話していたという。
事件の半年ほど前に結婚したばかりで、充実した人生を送っていた矢先の悲劇だった。
ネットの誹謗中傷
事件前の2016年9月~10月にかけて、昌大と妻の美紀子さんがインターネットの爆サイ.comという地域掲示板サイトで、誹謗中傷されていたことがわかった。
言葉の意味は以下の通り
- サンコウ・・・九州産交バス株式会社
- シイバ・・・椎葉村
- イイホシまさだい・・・飯干昌大
地域掲示板とはいえ、実名で誹謗中傷するのはれっきとした違法行為であり、許されることではない。ただ興味深いのは、これが「事件発生以前の書き込み」ということである。事件後にあることないこと書かれるのはよくあることだが、これは違うのである。
これが、たまたま昌大夫婦を嫌う「特定の誰か」が書いたものなのか、それとも夫婦が事件前から「悪目立ちする存在」だったのかは不明である。内容についても事実である保証はどこにもない。
父親が犯人の一家心中事件が多い
この事件は、いわゆる一家心中事件でもあります。こういう事件の場合、「殺人者の家族として生きていくのはつらいだろう」と考え、関係ない家族を道連れにする場合が多いです。
そして、犯人は圧倒的に父親。このサイトでも紹介している
中津川一家6人殺傷事件
日立妻子6人殺害事件
もまったく同じような構図で、父親が家族を殺害しています。