現在収監中の女性死刑囚は7人。
女性犯罪者の手口の特徴として、「毒を使用する」というのがあります。実際この7人のうち、実行犯だった5人は全員が毒や薬を使っています。(睡眠薬3人、青酸1人、ヒ素1人)
また、「悪い男の影響を受けた」と思われるのは3人でした。
- 風間博子:元夫の影響をモロに受けた
- 林眞須美:ヒ素を使用した詐欺は夫の影響
- 北村真美:夫が暴力団組長
1.林眞須美【和歌山毒カレー事件】
死刑囚 | 林眞須美(逮捕時37歳) |
事件名 | 和歌山毒カレー事件 |
犯行日 | 1998年7月25日 |
犯行動機 | 不明 |
手口 | 夏祭りでふるまわれるカレーにヒ素を混入させた |
死者数 | 4人 |
収監場所 | 大阪拘置所 |
1998年7月25日、和歌山県和歌山市園部で催された地域の夏祭り。ここでふるまわれたカレーを食べた大勢が体調を崩し、そのうち4人が死亡するという大惨事が起こった。
捜査でわかったのは、「カレーにヒ素が混入していた」ということ。警察は、当日のカレー周辺の人の動きを調査し、1分刻みのタイムテーブルを作成した結果、犯行が可能なのは見張り番のひとり、林眞須美(当時37歳)だけという結論に達する。
林家は以前、「シロアリ駆除業」を営んでいて、ヒ素が手に入れやすい環境だった。実際、林家からはヒ素が発見され、このヒ素を使用した保険金詐欺をしていた過去も発覚する。
林夫婦は逮捕されるが、この事件は「動機なし、自白なし、物証なし」で、捜査は難航した。警察は、状況証拠の積み重ねで起訴まで持ち込み、裁判で眞須美には死刑が確定した。しかし、本人は逮捕から現在に至るまで、一貫して無罪を主張している。
ちなみに夫は、この事件には関与していないと認定された。
事件から約23年後、林眞須美の長女(37歳)が飛び降り自殺した。その際、自分の4歳の次女を道連れにし、16歳の長女・心桜さんも両親によって虐待死していることがわかった。
2.木嶋佳苗【首都圏連続不審死事件】
死刑囚 | 木嶋佳苗(逮捕時35歳) |
事件名 | 首都圏連続不審死事件 |
犯行時期 | 2008年~2009年 |
犯行動機 | 贅沢な暮らしのための金銭目的 |
手口 | 睡眠薬で眠らせ、練炭自殺にみせかけて殺害 |
死者数 | 3人の男性 |
収監場所 | 東京拘置所 |
結婚の意志をちらつかせ、男性をその気にさせたうえで、嘘をついて多額の金を騙し取っていた木嶋佳苗。バレそうになったり、邪魔になった相手3人を練炭自殺にみせかけて殺害していた。
セレブを気取り、男性に取り入るのが天才的にうまい木嶋だが、その風貌はといえば一部のマニア以外に受け入れられるとは考えづらいもの。しかし、死刑確定後も拘置所にいながら3度の結婚をするなど、”魔性” のような何かを持っているのでは?と世間を騒がせた。
木嶋は裁判で死刑確定となり、東京拘置所に収監されている。当初は支援者の助けを借り、「獄中ブログ」なるものを世間に公表して、性懲りもなくセレブを気取ったような文章を書いていた。しかし、それも2018年05月10日の投稿を最後に更新が止まっている。
3.宮崎知子【富山・長野連続女性誘拐殺人事件】
死刑囚 | 宮崎知子(当時34歳) |
事件名 | 富山・長野連続女性誘拐殺人事件 |
犯行日 | 1980年2月25日、3月5日 |
犯行動機 | 借金返済のため身代金目的の誘拐 |
手口 | 若い女性を言葉巧みに食事に誘い、理由をつけて家には帰さず殺害 |
死者数 | 2人の女性 |
収監場所 | 名古屋拘置所 |
宮崎知子は誘拐に際して、顔を見られることは避けられないことから、初めから殺害することを決めていた。こうして富山でひとり、長野でひとり、若い女性2人を誘拐したあと殺害。殺したあとに、身代金要求の電話をかけるも受け取りに失敗する。
動機は金。愛人と経営していたギフトショップがうまくいかず、借金を抱えていたという。それでも彼女は、赤いフェアレディZを新車で購入して乗り回していた。そのフェアレディZは犯行にも使用していたが、この目立つ車は、誘拐現場などで目撃されていて逮捕の大きな決め手となる。
人を2人も殺しておいて、1円の金も手に入れられなかった宮崎。裁判では愛人の男に罪をなすりつけようとしたが、これも失敗。結局、最高裁で死刑が確定する。
4.筧千佐子【関西青酸連続殺人事件】
死刑囚 | 筧千佐子(逮捕時68歳) |
事件名 | 関西青酸連続殺人事件 |
犯行時期 | 2007年~2013年 |
犯行動機 | 遺産目当て |
手口 | 結婚相手に青酸入りカプセルを飲ませ殺害 |
死者数 | 4人 |
収監場所 | 大阪拘置所 |
筧千佐子が殺害したと認定されたのは4人。しかし、ほかにも4件の殺害に関する疑惑があった。これら4件に関しても千佐子は供述したのだが、物証がなく起訴には持ち込めなかったという事情がある。
彼女は結婚相談所で知り合った男性と結婚(内縁・交際含む)しては殺し、遺産を得ていた。手口は青酸化合物を飲ませて殺す毒殺。起訴できなかった4件は、警察が「事件性なし」と誤判断して、司法解剖を行わなかったせいで立証できなかったのである。
総額8億円もの大金を相続した千佐子だが、大半を金融の先物取引や株に投資していた。高リスクの銘柄ばかりに手を出し、すべて消失させただけでなく、借金まで作ることになったという。
「後妻業」という言葉が流行ったきっかけとなった事件である。
筧千佐子は、公判中に認知症を発症したが、精神鑑定を行った医師が「犯行時には精神疾患はなかった」と結論付け、責任能力や訴訟能力を有しているとの見解を示した。そして最高裁判決で、死刑確定となっている。
5.北村真美【大牟田4人殺害事件】
死刑囚 | 北村真美(当時45歳) |
事件名 | 大牟田4人殺害事件 |
犯行日 | 2004年9月16日~17日 |
犯行動機 | 恨みと借金苦 |
手口 | ロープで絞殺、拳銃で銃殺 |
死者数 | 4人 |
収監場所 | 福岡拘置所 |
暴力団の北村一家4人が共謀して4人を殺害した「大牟田4人殺害事件」。この事件は、母親・北村真美の知人への ”恨み、妬み” から始まった。
高利貸し業を営む知人女性と真美は、一時期は仲の良い友人だった。女性は金の取り立てを北村組に依頼するなど、持ちつ持たれつの関係だったのだ。しかし、北村組が借金苦に陥ると関係は悪化。知人女性の羽振りの良さを知った真美は、一方的に恨みや妬みの感情を持つようになったのが犯行の動機だった。
北村一家は、この知人を殺害して大金を強奪しようと考える。しかし、なぜか女性の息子2人と、ただ一緒にいただけの息子の友人にまで手をかけてしまい、一家は全員に死刑が下った。
この事件は「家族全員に死刑が確定」するという、世界でも類をみないケースとなった。
犯行に加担したのは、父親・北村實雄、母親・北村真美、長男・北村孝、次男・北村孝鉱の4人。息子2人が元力士ということでも話題となった。
また、犯行に加わっていない三男は、その後、自殺している。
6.石川恵子【宮崎2女性殺人事件】
死刑囚 | 石川恵子(当時39歳) |
事件名 | 宮崎2女性殺人事件 |
犯行日 | 1996年8月29日、1997年6月13日 |
犯行動機 | 父親の会社の借金穴埋め |
手口 | 知人女性に睡眠薬を飲ませ、絞殺 |
死者数 | 2人の女性 |
収監場所 | 福岡拘置所 |
父親の会社の経理を担当する石川恵子は、会社の借金の穴埋めのため、知人女性2人を絞殺して金を強奪した。標的に選んだのはゴルフ仲間の中年女性2人。犯行は杜撰で、それは「最初の犯行で得られた金がわずか9500円」だったことからもうかがえる。
それでも一応は、親戚経営のモーテルのゴミ箱から拾ってきたコンドームを残し、性犯罪にみせかけるべく現場を偽装した。しかし、手に入れやすいものを現場に残すことは、リスクも大きい。一旦容疑がかかれば、この偽装はかえって自分を追い詰めるものだった。
その後、石川は被害者のキャッシュカードで現金を下ろした際の防犯カメラ映像から、容疑者として浮上。そうなると、偽装のコンドームや、犯行後にとった怪しい行動が不利な証拠となってくる。
彼女は周囲の人にことさら「自分は怪しくない」とアピールしたり、普段通らない遺棄現場近くを通って検問されるなど、墓穴を掘るような行動を数多くしていたのだ。
石川は逮捕・起訴された。裁判では交際していた愛人男性に罪を着せようとしたが、そんな嘘は通用せず死刑が確定する。
しかし、なぜ経理を担当するのみの彼女が、会社の赤字を埋めるため殺人まで犯したのか、動機自体が不可解な事件である。
7.風間博子【埼玉愛犬家連続殺人事件】
死刑囚 | 風間博子(逮捕時36歳) |
事件名 | 埼玉愛犬家連続殺人事件 |
犯行時期 | 1993年4月20日~8月26日 |
犯行動機 | 金銭トラブル |
手口 | 栄養ドリンクに混ぜた筋弛緩剤を飲ませて殺害 |
死者数 | 4人 |
収監場所 | 東京拘置所 |
この事件の主犯は関根元で、風間博子はその元妻である。
この夫婦は、「アフリカケンネル」という犬の繁殖も手がけるペットショップを経営していた。関根はカモにする客に、めずらしい犬種のつがいを1000万円という法外な金額で売っていた。そして、客が騙されたことに気付き、トラブルになると相手を殺害、遺体をバラバラにしていた。
関根は遺体を徹底的に解体し、それを「ボディーを透明にする」と表現していた。それは、骨まで粉々にする念の入れようで、裁判でも犯行を立証するのが困難になった。
風間は共犯者として夫婦そろって死刑になったが、一貫して無罪を訴えている。もうひとりの共犯の男(懲役3年)は、「風間は無実だ」と証言するが、認められなかった。
関根は、日本にシベリアンハスキーを流行らせた人物として、当時テレビに出るなどしていた。虚言壁があるが話術も巧みで、人を引き付ける才能があったという。